主演の二人はところどころ素でやってるんじゃないかと思うほど自然な演技だが、後半は感情を吐露する芝居も見せてくれる。榎本加奈子がこんなに巧いとは思わなかった。そして、こんなに黒縁眼鏡が似合うとも思わなかった。

ほとんどのシーンが固定カメラで撮られているが、いくつかのシーンではカメラがダイナミックに動く。榎本が夜の街を走るシーンの横移動カメラは「ゴダールの『万事快調』か！」と思うほど映画的興奮に溢れていたし、藤田陽子が元恋人の西島秀俊をガツンと殴るシーンでのグラグラ揺れるカメラワークにも興奮した。

あと気に入ったシーンは、榎本と藤田が鏡に向かって延々「この服似合う？」とかなんとか喋ってるシーン。榎本がブランコの前でラジオ体操するシーン。なんでもないシーンがやけに印象深い。

終わり方はちょっと唐突に感じたが、しかし不思議な余韻が残る映画だった。是非とも女性の感想が聞いてみたい。個人的には、素晴らしい作品だと思います。