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[コメント] 機動警察パトレイバー2 the Movie(1993/日)

揺れ動くふたつの心。構築のベクトルと破壊のベクトル。進歩のスピードと戦争のスピード。石仏は語らない。
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







●港湾での廃墟を眺めながらの思索。夕暮れの赤い罪悪感に染まる海。

「戦争なんてものは、始まっているさ。問題は、いつ、けりをつけるかだけだ。」

「他国の無数の戦争によって支えられてきた、俺たちの経済的繁栄、平和。」

「正義の戦争と不正義の平和、その差は、そう明瞭なものでない。」

現在の、この不安下の日本を、押井守は10年前に精確に予見していたのか!

●ふたつのメカニック

仔猫を避けようと微細にソフトに動くレイバー、そして、優雅に飛来し目標をピンポイントに攻撃する戦闘機。どちらのメカにも人類が成し遂げた進化というベクトルに、感銘を受ける。ただし惜しむらくは、物理的に、構築する作業よりも破壊する作業の方が、遥かに容易(たやすい)いことだ。

●ただ降り積もる雪

構築と破壊の活動を行う人類を、空は、神は、ただ優しく見つめる。白い雪で人々を明るく照らし出す。深々(しんしん)と雪を降り積もらせる。人類の進路は人類が決める。神は優しく見つめるだけ。そこまでの力は無い。

●ラスト・シーン/邂逅(かいこう)

人工島。飛翔するかもめたち。蜃気楼の中の東京。

「柘植行人(つげゆきひと)、あなたを逮捕します。」 機能的に手錠をかける片方の手。そして、同時に愛をこめて指を絡めあう片方の手。そう、この二元性こそが人類。暖かなその片方の手の、可能性に賭けたい。

「何ひとつやらない神様。神がやらねば、人がやる。いずれ分かるさ。私たちが奴に追いつけなければ。」

「もう少し観ていたかったのかも知れんな。この街の未来を・・・・・・・」

★4.5

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水那岐[*] 秦野さくら[*]

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