コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] セイ・エニシング(1989/米)

決して完成された映画ではない。しかしクロウのデビュー作らしい「これを撮りたい」という勢いと、若き日のキューザックの驚愕の演技の前には全てを許してしまう気にさえなってしまう。
ナム太郎

特に前半の卒業パーティのくだりが秀逸。あの場面ひとつでクロウは、決して目立たないが誰からも愛され頼りにされるロイド(キューザック)というキャラクターを、ダイアン(アイオン・スカイ)と観客との双方に納得させ好印象を与えることに成功している。だからその後は映画の中で何が起ころうと、彼なら何とかするだろうという安心感とともにその物語の中に自然に入り込んでいくことができた。

こうなるとあとはすべてがイケイケで、例えばちょっと間違った人がやったらただ引いてしまうだけの家前でのラジカセ大音量や、留守電への8回目の電話なんかも、もう完全に彼の立場に立ってそれを見ている自分がいることに気付かされる。しかし、そのあたりもクロウは決して無理をせず、やり過ぎない演出に徹している。それが大変心地よく、このあたりまでくればあとはもう2人の新たな人生の旅立ちをただただ見送るだけであった。

ダイアンの父親や、失恋の歌を歌うロイドの女友達等の使われ方、あるいは雨の中の公衆電話のシーンなどもとてもよい。ただ惜しむらくは、ロイドの姉親子や男友達の扱いの中途半端さか。が、そのあたりをデビュー作で指摘するのはやや厳しすぎるというものだろう。

それにしても、この映画でのキューザックはすごい。若さ溢れながらも洗練されたその演技を見ていると、後の彼がひっぱりだこのオファーを受け続けているのもとてもよくわかる。今現在、この歳でこれほどまでに監督たちの信頼を得、いろんな映画に出続けているのは世界広しといえども彼と麻生久美子くらいか。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。