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[コメント] ザ・ローリング・ストーンズ レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー(1982/米)

1981年のザ・ローリング・ストーンズ
ナム太郎

ポップなタイトルの残像が消えぬ中始まっていく一大ロック・ショー。空高く放たれる色とりどりの風船に、スタジアムを埋め尽くした大観衆が盛り上がる中、1曲目に演奏される Under My Thumb の、Love You Live の頃とは違う意表をついたような軽さが当時のノリを感じさせる。当時のノリと言えば、ミック・ジャガーの細い足のラインや股間が強調された白いタイツはまるでフレディ・マーキュリーのようだ。どちらが先かは知らないけれど。

そんな当時のノリを感じつつも、やはりストーンズだと思わせるメンバーのやりたい放題さが楽しい。ビル・ワイマンは曲が始まってるのにまだタバコに火を点けたりしてるし、ロン・ウッドはビールを飲みながら一杯機嫌でいちびってるし、キース・リチャーズにいたっては酒を瓶ごとラッパ飲みしてるし。また、そんな彼らに構うことなく黙々とドラムを叩き続けるチャーリー・ワッツ。そんな彼らの姿を、観客の熱狂ぶりとは裏腹に20台のカメラは冷静に(例えばチャーリー・ワッツの剥げ頭までも)映し撮る。そのギャップが素晴らしい。

しかし、この映画で何より素晴らしいのは、一見ミックが主役の扱いを受けているように見えながら、実はその座がキースであることがしっかりと示されていることだ。そんな目で見てみたら、キースがその姿は小さくともカメラの中心に映し出されている画の多いこと多いこと。そして本篇のハイライト的扱いをうける Little T&A 。このあたりの趣味は反逆の人とも呼ばれたハル・アシュビーの趣味だろうか、それとも当時ヘロインからの脱却を図ろうと懸命だったキースへのアシュビーなりの声援なのだろうか。

評判の『シャイン・ア・ライト』を未見なのでその比較はできないが、1981年のザ・ローリング・ストーンズの姿が余すところなく映し出されていているこの映画は、これはこれで十二分に楽しめる作品となっている。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)緑雨[*] 浅草12階の幽霊

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