この映画、はっきり言って退屈だ。こけ脅しの音楽がないどころか、すごく静かである。だから興奮を呼び起こしてくれない。

同時に難解だ。正直、僕はまだ意味が理解できない部分がたくさんある。黒沢清が書いた小説を読めば、わかるのだろうか。今度読んでみようかなあ。

でも、退屈だ、難解だと言ってこの映画を避難するのは、たぶん的はずれなんだろう。監督は確信犯で、こういうふうに仕上げたのだと思う。

退屈な映画は観てると、眠気をもよおすよりも、陰鬱な気分になってくる。気持ちが全然盛り上がらないからだ。同時に、静かだからこそ、萩原聖人の呟きが、心に染みついてくる。

また、意味が分かりにくいことによって、記憶が混乱し、人格が崩壊していく様子を僕たちは体験することになる。意味がわからない場面を見続けていると、まるで自分が何も考えずに行動しているような、自分以外の何者かに操られているような気分になってしまう。

個人的には、こういう難解な映画は嫌いだ。……と言いたいところだが、難解な部分の意味を知りたいと思っているのは、この映画に興味がある証拠なんだろうな。