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[コメント] グッバイ、レーニン!(2003/独)

完璧にこれは「映画」である。 2004年5月4日劇場鑑賞(おまけして★4)
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







必要性を感じられないキューブリックへのオマージュはどうかと思うよ。微妙な所で早回しを多用したり(例えばバイク走行中の映像とか)『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』のオマージュをしている辺り、もしかしてこの監督=この映画で出てきた編集マニア(?)みたいな人 なのでは!?とか思ったりもして。

音楽は『アメリ』のヤン・ティルセン。一箇所『アメリ』と全く同じ音楽が使われていて、どうも気になって集中できず。この人の音楽にこの映画、って所々ミスマッチに思えたのだけど。まぁ全体的には気にはならなかったし、結構肝心な所では良い感じに盛り上げていたとは思う・・・多分。

ただ、朝っぱらから『サウンド・オブ・ミュージック』見てからだったせいか、眠気で意識朦朧状態だったので、少し演出力が物足りなかった気もした。もう少し盛り上げが欲しかった、と言うか何と言うか。まぁ俺が寝不足だっただけかもしれないけど。

ただその分、話はメチャクチャ面白い。「母が昏睡状態の間に全てが変わり、母の意識が戻ったのはいいけど、少しのショックで危険な状態になるから全てを元通りに」と言う基本プロット自体は、それなりに面白味を感じるものの、何か一つパンチの弱さを感じるものもあったけど、そこに少しずつブラック、と言うか細かいユーモアを混ぜながら、必死に母親の世話を続けるぼんくら息子。ソレに対して「もういいじゃん」と半ば投げやりの姉貴。

何かここに老後の両親を子供たちはどう世話をするのか、と言う介護の問題を垣間見た気がした(思い込みすぎ?)

何よりも、東と西ドイツの併合を誤魔化す為に、ありとあらゆる言い訳をするその内容が独創的だし、何よりも素晴らしいのが、単純に「人を助けるための嘘」で終わるのではなく、その嘘がいつしか母親を助けるモノから、自分自身の理想を追い求める為の嘘になる所に皮肉、と言うか映画的な感動を感じた。

社会主義が崩壊し、西のモノが流れ込んできた事を知っている母と、そうとは知らずに必死に母の為に東ドイツは素晴らしい国になってきているのだ、と誤魔化し続ける息子。

感動的だ。物語だけは。そして夜空を彩る花火。花火。花火、そしてヤン・ティルセンの音楽。感動せずにはいられない。

だけど、そんな時、俺の脳裏によぎる愚鈍な考え。

社会主義でもなく、資本主義でもなく、(劇中の母が考え、息子に受け継がれた)国家の理想系と言う物は、あくまで国民の理想にすぎず、それは決して実現される事の無い理想に過ぎない。映画や個人の脳内にしか存在しない理想国家であり、現実には薄汚く汚れた権力者が支配する世界しか残らず、国家を信じる事は危険なのでは?

とかバカな考えを巡らせる。だからコレは映画なんだ。映画でしかない。

そんな事考えずに、必死に母親を愛し続けるぼんくら息子の幸せのマジック、ていう映画として捉えればもっと素直に見れたのかもしれないけど。

(評価:★4)

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