コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 素晴らしき日曜日(1947/日)

前向きに生きようとする彼女の笑顔に支えられている、金が全てで誰も自分以外の他人を気遣おうとしない世の中に悲観してばかりの男の復活には、黒澤の日本復興への祈りが込められている。
ジャイアント白田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ラスト、捨てられたタバコを拾わなかったのは、きっと大きな夢を両手で持っていたからであろう。彼の深々と帽子を被る癖は将来の見通しを持てない&夢を見る事をあきらめた心を表していた。でも、ラストは深々と被らず顔に光が差し込んでいた。夢を持つ事がいかに大事かを再認識させてれたシーンであった。

しかし、未完成交響曲を見に行こうとして券を求めに行くもダフ屋にチケットを買い占められた時、夢を描いて想像してささやかな小芝居をする二人を現実に引き戻した家無き人々が登場した時「黒澤明は鬼だ!」と思った。が、決して本心からそう思わなかった。何故か?それは、人の本質ばかりを見せられたから一瞬思ったのであろう。本質を見たくないと身構えている日常生活に慣れ親しんだ柔な人間は、嫌悪感を抱きつつも本質から逃れられないことを教わった気がした。

黒澤明の作品が何故に世界で評価されるのかと考えると、人間の本質を描く事に徹しているからだと改めてこの作品を見て思う。「酔いどれ天使」「素晴らしき日曜日」は終戦直後の日本にヤミ市に人々のエゴが極限状態で生きる為に赤裸々に陽の下で存在したのを直視した結晶。人間から逃げないで、人間に立ち迫った志し高き映画人黒澤明は尊敬に値しまくる。

2002/9/10

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] TOMIMORI[*] ペンクロフ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。