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[コメント] やがて海へと届く(2022/日)

静かな映画だ。親友が行方不明で、気持がそれを受け付けない。誰にもわかる感情だ。女性は5年もたっていて、まだその空白感は続いている、、。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







東京での高級バーラウンジが素敵だ。客の一人一人を見て音楽を流す店主。心のつながりを常に考えているバーだ。しかし、驚くことにその店主は急に自殺してしまう。人の命のはかなさよ。死はかくして我々のすぐそばに駐留している。

周波数を合わせることで日常生活を営んでいた親友から、彼女こそが実際は強いのだと女性は告げられる。確かに、人に合わせて生きるということは自分をなくすということだ。その時間が大きければ大きいほど、自分を消耗させる。

他人と波長を合わせることの苦手な彼女は、つまりその分決して弱くなんかないのだ。

僕もそうだと思う。若い時は人に合わせるのがうまく、どんな会話でも入ることができた。でも、ここ20年ぐらいは、自分を主張するようになった。当然、敵もできるし、愛がないとまで言われたこともあったっけ。

でも今の方が精神的には安定している。くよくよすることもあるが、自分が悪いからだとは思わなくなった。その人の領分に不可侵することで、自分だけの世界を保とうとしている。

この静かな映画で、沸々とこんなことを考えながら、映画は終わる。命ははかないけれど、強さも持っているはずだ。たとえ死ぬことはあっても、その人を思う気持ちが存在すれば、十分その人は生きている。人はそういうことで、人の命をつないできたのだ、と思う。

そんなことをこの映画を見て考えた。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

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