[コメント] 害虫(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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少女にとってまわりの人間は、ビンの中を泳ぐ色とりどりの魚と同じなのかもしれない。自分の身にふりかかるものを、ビンの中に閉じ込め、「観察者」のように眺める。そういう風にして他者との間に皮膜を作り、距離を置くことで、少女は身を守ってきたのだろう。
しかし、それゆえに、少女は自らの居場所がどこにあるかを知らない。身の置所に困るかのように、少女はさまよい続ける。一方ビン詰めの生き物たちは、しだいにガラスを割って少女と接触を図ろうとする。同級生の男の子の口は容易く封じることはできても、自らが共犯となって投げつけた火炎ビンが引き起こした地獄は、少女には到底手に余るものであった。傍観者ではいられなくなったその時、少女の中のなにかが壊れたのだろうか。
少女は観察者だ。様々なことを知っている。しかし、その「知っている」には痛みが伴っていない。ラストはそんな自分への、少女なりの決別なのだろうか。
おおまかにはこのような話として受け止めたのだが、正直なトコロ見ていて「何となく」程度の印象しか得られなかった。これを一本のストーリーとして見ると、細かなトコロでひどく曖昧な要素が多い。冒頭の羽毛、目を瞑って本を選ぶトコロ(これは自分で何かを選ぶ手段を知らない、ということなのかな?)、手話での会話、四角に切り取られた空、少女を取り巻くチリ、その他諸々・・・・。漠然と何を言ってるのかが分かる要素もあるが、それらが「効果的」かは、かなり疑わしい。個々の描写の上手さ云々以前に、こういった要素が物語(とテーマ)を拡散させているような気がしてならない。
個人的にはこの乾いたタッチは嫌いではない。ただ、本当のところ何がやりたいのかが、不透明というか曖昧。物語、映像、宮崎あおい映画。そのどれかに主眼を置くのではなく、まんべんなくそれらを撫でているうちに拡散してしまった映画、という印象。たしかに一見宮崎あおい映画の比重が高いようにも思えるけど、その割には物語や映像も何気に自己主張している気配が感じられるので、割り切って見ることができませんでした。
(2003/4/22)
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