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[コメント] ヘカテ(1982/仏=スイス)

フレームの外側の虫の羽音。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







シャンパンの泡の中の物語。あるいは煙草の煙の向こうにフェイドアウトする後姿。全ては夢なのだろうか。しかし儚く消え去る幻にしてはあまりに生々しく、一生消えることのない体温と臭いを残してそれは消え去る。まさにシュミット監督の世界。彼の作品の中でも、特に商業的に成功を収めた作品らしいが、メロドラマの中に時折チープさや滑稽味を漂わせているトコロも監督らしい。

時に芝居がかった室内シーンの二人、そしてそこでのバリエーションに富んだ立ち居地、立ち振る舞いの面白さ、いくつもの扉が存在する迷宮のような街並みの魅力、そして映画の中の無声映画。まるで映画の中にいくつかの入れ子の箱が存在しているかのようだ。そして、冒頭からして既に腐りかけた空気を伝えるこの映画も、一つの限られた箱なのかもしれない。画面の外から聞こえてくる羽音は、毒々しいほどに甘い蜜に誘われた彼岸の虫たちのそれなのかもしれない。なんて夢想してみる。

(2006/10/28 再見)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ

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