[コメント] 死霊のえじき(1985/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
話が進めば「30分して戻らなければすぐに駆けつけるからな」、だもの。そりゃあ燃えますわ。ラストで手書きで未知の暦を新たに埋めていくカレンダーの扱いなども含めて、何気にキワモノ以外のところでも造りがしっかりしているのが、さすがロメロです。
今回は登場人物がある程度の目的を持って行動しているので、テーマがある程度絞れている。ゆえに前作のようないろんな方向から読み込める面白さには欠けるけど、これはまた独自の面白さがあります。
それにしても「最終版」の存在をここのコメントではじめて知りましたけど、少なくともこの映画であえてスプラッタシーンをカットするなんて愚の骨頂。というのも、肺腑を暴いて腸の一本、脳のシワまで徹底的に「見せる」ことで、それでも見ることのできない何かに怯える、というのがこの映画の最もキーとなる要素だから、と思うワケです。ということで、博士も決して無駄な仕事をしているワケじゃないのです(笑)。
これは非常に80年代的な映画。それは画面や音楽が醸し出すもの以上に、ビデオの普及などを始めとしたメディアの急速な成長のおかげで、それまで以上に「見る」ことに貪欲になった時代と、この映画のテーマがキッチリ結びついていることに拠る気がします。「見る」という行為に対する盲目的な過信は、一方で「見えない」ことに対する更なる怯えを生み出しているのかもしれません。
自らが選び出して拘り続けた素材を、さらにその時代の空気の中で命を吹き込むなんて、本能的に何かを嗅ぎ分けるチカラがあるのだろうか、やはりこの監督はタダモノではないです。
(2007/3/9)
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