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[コメント] サハラに舞う羽根(2002/米=英)

戦いのシーンがあったからこその点数。人間ドラマとして観てはいけない作品ですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作を強引に説明するなら、「良心的兵役拒否をした人間の意地について描かれた作品」となるだろうが、なんだかとても居心地の悪い作品だった。何というか、主人公の行動に共感がもてない。戦争は嫌だからと言って逃げておきながら、敢えて危険に自ら飛び込むと言うのも、ここでは一貫性が見られない上、なんだか「馬鹿にされたから見返してやろう」というだけの意志しか持ってないように見えるし、そこでわざわざ危険に身をさらしながら、友を助ける過程があまりにご都合主義に行きすぎ。主人公は自分の都合で勝手ばかりやっていて、結局偶然だけで物語を作ってしまってる。

 最初からそう言う物語なんだ。と開き直られると、それだけの事なんだが、現代でこれを作るんだったら、もうちょっとテーマをはっきりさせるべきだっただろう。特に戦争に対してのスタンスがあまりにも不確定なため、観ていてどうにも居心地が悪く、苛ついてしまう。スーダンを死守しなければならないというのならば、その政治的なメリットとデメリットもきちんと説明してやらなければいけないはずだ。この話は一方的に今の主人公の目でしか描かれないため、戦史ものとしても全然機能してない。

 それにヒロインであるはずのケイト=ハドソンの位置づけもおかしい。この映画で彼女のスタンスというのは、「どれだけ勇敢な男を自分の伴侶に出来るか」という価値観しか持ってないように思える。実際言い寄られた男がそれなりに勇敢なら、ふらふらとそっちの方になびいてしまうし…こんな女に振り回されるのだけはごめんだ。としか思えないのがなんとも。同じ描き方をするにせよ、もうちょっとヒロインらしく撮りようがあったんじゃないか?

 それでも良い部分も一応ある。特に戦闘シーンの演出は素晴らしい。CG全盛の時代に敢えてアナログで、生の迫力を見せたのは正解。全方位から攻められる時、方形陣をしっかり作って対応するのを俯瞰で見せるカメラも見事だった。

 ただ、その中で友情のドラマを演出するのはいかがなものか?主人公が馬鹿みたいに強い…と言うか、絶対あんな強さはありえねえって。

 これを作るんだったら、肯定的であっても否定的であっても、良心的兵役拒否をしっかり捉えるべきだっただろうし、友情に主眼を置くのだったら、下手なドラマ性を求めるよりも心の交流をもっとしっかり描くべきだった。更にラブストーリーにするんだったら、ヒロインの描き方をもっとはっきりさせて…結局何もかもが中途半端だったということだ。やりようによってはいくらでも面白くできた作品だと思えるんだが…

(評価:★3)

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