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[コメント] キン肉マン(1984/日)

1984年。空前絶後のアニメの当たり年は、こういう作品群に支えられてこそ存在すると思うと、拝みたくなるような作品ではある。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
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 1984年夏の東映まんが祭りで上映された作品で、「キン肉マン」初の劇場用作品となる。1984年邦画興行成績8位。

 1984年と言えば劇場用アニメには激震が走った年として知られている。『風の谷のナウシカ』(1984)も『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』(1984)そして『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)もあって、一気に大人向きアニメーションが開花した年だった。だが、そのような作家性を優先して、ヒットすることをあまり考えずに劇場用アニメーションが作られたのは、これ又空前の少年ジャンプブームにより作られたこども向けアニメーションがちゃんと下支えしてくれていたからに他ならない。特に東映まんが祭りはタイトル通り多くのこども達に受け入れられ、大ヒットを果たしていたからこそである。

 そんな東映まんが祭りの一本として作られたのが本作。テレビアニメのスピンオフと言った風情で、全く違和感無くテレビから入ってこれるので、子供には大受けだったようだ。

 テレビアニメーションとしての「キン肉マン」はいわゆるキン消しブームを引き起こして社会現象にまでなっていたものだが、これはテレビ版の過剰な演出も功を奏していたと思う。原作では数作にしか登場しないキャラを、視聴者の代弁者としてレギュラー登場させてみたり、ドジな悪人キャラをメインキャラに据えてコミカル要素を徹底的に増やしたり、オリジナルキャラを多数動員して、ナンセンスギャグを連発させたりと、非常に挑戦的な作風が光る作品だった。それもちゃんと原作の超燃える展開を下敷きにしているから(と言うか、原作に追いつかないように苦心した結果ギャグを増やさねばならなかったという事情だろうが)、このようなギャグ話が映えていたわけだ。

 そして劇場版となる本作だが、テレビ版からそのまま移行したと言った感じで、物語そのものよりもギャグに力を込めたような作風となっていて、物語構造がシンプルな割に枝葉末節が多すぎる話になってしまっている。

 素直な感想を言えば、「テレビでやれ」と言いたくもなる。劇場用作品として鑑賞に耐えるようなものではないのだが、本作の成功の最大の意味合いは、まさしくその「テレビと同じ」と言う点にあったわけだから、そこが実は魅力なのだろう。

(評価:★2)

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