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[コメント] 白雪姫(1937/米)

傑作であることは言うまでもないにせよ、白雪姫の描写が今観るときつい。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 世界的なアニメーション映画を作り続けているディズニー。一貫して子どもをターゲットとしてアニメを作っているのだが、当初、その方向性は二つに分かれていたように思う。

一つは低年齢層の子ども全般をターゲットにしたもので、動物を用いた作品。代表作は映画では『ダンボ』(1941)だろうけど、キャラものではミッキーマウスやスティッチなどもも入る。まあこれがディズニーの基本となる。

 そしてもう一つ、それは幼児から思春期前の女の子をターゲットにした作品群。これも現在にいたるまで連綿と作り続けられている女の子を主人公にした作品群となる。ディズニー映画としてはむしろこちらの方がメインな位で、これも又ディズニーを特徴づける作品と言える。

 そしてこの女の子を主役にした作品は、決して画一的ではなく、時代によって女の子の性格や物語展開に各段の違いがあるのも特徴。これらの作品を観る時、その年代を念頭に置いて観ると、この時代の女性像が透けて見えてくるようでとても興味深い。

 そんなディズニー映画の最初の大ヒット作となった作品が本作で、この作品こそが現在に至るディズニー映画の牽引役を果たしたという、映画史に残る名作(当初普通の映画の倍近い50万ドルと言われたが、結果として170万ドルの制作費となるのだが、公開の年だけで850万ドルを稼ぎ出したという)。ハリウッドは1時間半ものアニメを誰が観る?と冷淡だったが、記録的な大ヒットを飛ばし、数々のスタンダードナンバーをも記録する。ディズニーの飛躍は、ひとえに本作にかかっていると言って良い。

 実際、この映画の影響力は映画に留まらず、「白雪姫」と聞いたら真っ先にここに登場したキャラが念頭に浮かぶし、こびとさんのイメージもここからきている。はっきり、世界の文化にまで影響を与えた作品でもある。現在に至るも、まだ子どもたちによって定期的に観られている。

 前述したが、それでこれを観ると、この当時の女性像も見えてくる。そしてその姿は、今の時代、しかも男の目からすると、大分ズレた感覚を感じるものでもある。

 ちょっとだけ言いたい放題言わせてもらうと、まず白雪姫の描写。この子は自分の置かれた環境をそのまま受け入れてしまう。彼女にとっては、多少の悲しみはあったとしても、「怒り」とか「悔しさ」とかのネガティブな感情が全く欠如してる。城を追い出されたからと言っても、すぐに新しい環境の中で自分の居場所を作り、それなりに満足した生活を作り出す。これを徹底したポジティブシンキングと取ることもできるが、アニメではそれは「ちょっと残念な」女の子のように見えてしまう。あの挙動不審な手の動きも(『アリス・イン・ワンダーランド』でもやってたけど)なんかそんな気にさせられてしまう。

 そして物語においても、白雪姫は物語の中心にいながら、驚くほど何にもしていない。与えられた運命をそのまま受け止め、流されていく内に、周りが勝手に物語を進行させていくだけ。更に後半になると、白雪姫はただ寝てるだけになる。せいぜい彼女が主体的にやったのはこびとたちの家を住みやすくしたことくらい。後はリンゴ食べただけ(しかもこれ、全く主体性がない)。

極端なこと言わせてもらうと、これは男の側から見た女性の理想像にも思えてしまう。女の子には自己主張はいらない。素直な心で、こどものようにただ待ってるだけであってほしい。そんな欲求が透けて見えるような気がしてくる。

 これがこの時代の価値観と見るか、あるいは普遍的なものと見るかで評価は変わるだろうが、今の目で観ると、少々いやなものを感じてしまう。

 昔観た時は全くそんなこと考えてもいなかったが、レビュー書くにあたって、自分の中にこんな感情があったことに気づかされた。

(評価:★3)

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