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[コメント] 太陽の王子 ホルスの大冒険(1968/日)

素晴らし過ぎ。『ゲド戦記』の後に本作を観ると、いったい40年という時間は何のためにあったのかと思わされること請け合い。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 日本における青年向きアニメ第一作で、日本では珍しいライブアクションフィルム。日本のアニメの方向性を決定させたと言う意味でも日本アニメ史上にあって最重要の作品と言われている。

 本作の噂は昔から聞いており、興味はあったのだが、別段理由もないまま何となく敬遠し続けていた。結局本作を観たのは宮崎吾朗監督の『ゲド戦記』(2006)を観た後で、本作の製作から40年近くも経ってからと言うことになる。

 マジで驚いた。はっきり言って40年という時間を超越したとんでもない作品である。

 正直な話、あの原作無視も甚だしい『ゲド戦記』の後で観たからこそ、本作の意味合いもよく分かる。遙かにこっちの方が原作の「ゲド戦記」に沿ってる。しかもまだこの時代、「ゲド戦記」自体1巻が出たばかりなのに、2巻の要素までちゃんと取り込んでる。そもそも「ゲド戦記」は1巻で自分自身の中の闇を受け入れたゲドが2巻でテナーという少女を助け、(心理的な意味で)闇の中を共に歩んで光を見つける。という要素があるのだが、まさしく本作のホルスとヒルダの関係はそのままゲドとテナーの関係に当てはめることが出来る。ホルスは試練に際し、自分自身を見出しつつも、痛みを共有することでヒルダを救っていく。そこには爽快感は無いが、ぐぐぐっと心を締め付けるような、痛みを超えた快感があった。

 それだけ本作では肉体的アクションより、心理的描写が実によく描かれていると言うこと。と言うか、一つ一つのホルスの行動が実は内面的な戦いである。と観ることが出来るのだ。

 そしてホルス本人の問題だけではなく、村とグルンワルドとの関係とは、ヴェトナム戦争そのもの。小国が二大大国によって翻弄される過程を事細かく描いているのも特徴的。時代をも感じさせてくれる作品である。

 様々な意味でアニメーションの可能性ってものを示した作品。

 作家性が良く出ているとは言え、本当に良くここまで詰め込んだものだ。驚くべき内容である。しかもよく動くしね。本当に目が離せない作品だったよ。実はさほど評価してなかった高畑監督を一気に見直してしまった。

 いっそ『ゲド戦記』も割り切って本作の続編という形にしてしまって、『闇の王子アレンの小冒険』って題にすりゃ良かったんだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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