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[コメント] わが恋せし乙女(1946/日)

これが戦後民主主義の姿…なのかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 戦後になって、これまで抑えてきた木下恵介監督が作り出したのびのびした作風の作品。物語自体も監督の若い頃の思い出がベースだという。物語はやや起伏が足りない部分はあるものの、戦後民主主義の方向性がはっきりと見られ、これまで抑えられてきた、封建制度からの大きな脱却が図られている。少なくとも、これまでの邦画では決してみられる事の無かったタイプの作品である事は確か。

 好きなものを「好き」と言えるのは戦後民主主義価値観の最たるものだろう。本作はそれを主題にしているが、この場合恋愛至上主義と言うよりは、むしろ新しい映画を模索する過程の作品として捉えるのが正しいと思われる。親に強要される事無く、自分の感情をストレート相手に伝えられるようになった。というのはそれだけでも大きな進歩。それにこういった血の繋がらない妹に対する思慕ってのは、後に様々な形で日本の文壇を彩る事になるのだから。その走りとして捉えるべき。

 それと、雄大な自然をストレートに描けるようになったのも特徴だろう。物語が明るく作られているため、自然豊かな浅間の牧草地が大変映えていた。自然描写もこれまでは人間の力や技術力を誇るために出されていたばかりだから、これも新しさということになるだろうか。

 ロケ地の浅間牧場は『カルメン故郷に帰る』(1951)と同じで随所に同じ風景が出てくるが、これは日本初のカラー作品だという事で、どれだけ発色するのかのテストを兼ねていたためだそうだ。

(評価:★3)

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