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[コメント] 殺しのドレス(1980/米)

いかにもって作品なんですが、逆にこれがデ・パルマなんだな。と納得出来てしまうのが監督の人徳ってやつでしょうか?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ヒッチコックの後任者と自負するデ・パルマ監督が、本当にそのまんま自分の描きたいものを描いた。と言った風情の作品。正直、誰かこいつの首に縄かけろ!と言いたくなるほどの、ヒッチコックオマージュと、作りたい放題の作風は、完璧にあきれかえってしまうほど。

 でも、だからこそ、誰が観てもこの作品はデ・パルマだと分かる。

 本作はそのまんまヒッチコックの『サイコ』からの設定流用ばかりで作られてるが、それは構造にまで及んでる。冒頭の情事のシーンから始まり、だんだん精神の均衡を崩していく女性。襲いかかる金髪の女性のシルエット。そしてその女性が殺されてしまってからは主人公が転換。ラストのオチに至るまで見事に『サイコ』してる。これだけ自分が好きなものをストレートに「好き」と言って、そのまま映画に出来る人って、ある意味とても素晴らしいと思える。

 多分タランティーノからだと思うのだが、最近自分のことを「オタク」と呼ぶ監督が結構増えてきて、そう言う人は自分の作品が誰のどんな作品に影響を受けたかを全く隠さずに語るようになってきたが、その大先輩に当たるのがこの人なんだな。

 とはいえ、だからといって本作がパロディにはなっていないのもデ・パルマの面白さだろう。この作品のカメラワークと画面の映え具合は、独特の美学を持ち、なんということもないシーンが一々凄く凝りに凝った作りになってしまう。ディッキンソンが単に外を出歩いているだけのシーンでさえ、カメラはその肢体をなめ回すかのように移動し、行きずりの男と出会うだけで、まるで大ロマンスのごとく画面を盛り上げる…はっきり言って完全に無駄と言われればそれまでなのだが、それをやってくれるのがデ・パルマという人だ。なによりそこに敬意を払いたい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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