[コメント] デトロイト(2017/米)
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内外で大きな評価を受けるに至るキャスリン・ビグロー監督だが、これは他の誰にも真似できない監督独自のタッチがきちんと評価されているからだろう。
そのタッチとは、簡単に言えば“冷徹さ”と言うべき。
多かれ少なかれ作り手には主義主張というものがあって、それに沿ったものが作られることになるのだが、監督の作る作品は、その主張が非常に低い。とにかく冷徹に目の前にある事実をカメラに収め、そこにできる限り私情を挟まないようなつくり方をしている。だから創作であるにも関わらず、ドキュメンタリーのように見え、緊張が解けない。それが監督の際だった特徴である。
その冷徹さは、確かにこれまでの作品でとても有効に用いられていたし、本作でも遺憾なく発揮されていた。
それは決して間違っているとは思わないのだが、少なくとも私個人としては、これまでの中では本作は格が落ちるように感じた。とても物足りなく思えてしまった。
それはおそらくレイシズムという、映画的文脈においては絶対悪を示す題材を取っていながら、それを映画内で断罪しようとしない作りだったからだと思える。
極めて事実に即した作りにより、見た目で分かる断罪は存在しないし、残された人々のやるせなさも冷静に描いている。
これが監督の味なのは分かるんだが、冷静さにいらつきを覚えてしまう。当たり前の作品で良いから、悪に対して「お前が悪い」と言って欲しかったというのが本音。
だから観終わった後ですっきりしないし、心の中にモヤモヤがたまる。
他の題材であればこの冷徹さを評価するのだが、殊このテーマでは、どうしても評価できない。そう思えることが私自身の限界なのかもしれない。
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