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[コメント] 地上より永遠に(1953/米)

クリフトの台詞「世界一強いアメリカ海軍に戦争仕掛けてくるバカがいる」…バカとは誰だと考える敗戦の月。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 名作揃いの1953年のアメリカ映画の中で、他の多くの候補を破って堂々アカデミー作品賞を射止めた作品で、全米興行成績も1953年では2位(1位は『聖衣』)と言う記録を残している、映画界に燦然と輝く名作(何せあの『ローマの休日』や『シェーン』さえも抑えたんだから)。私としても軍内部を扱った名作というので、観るのを大変楽しみにしていた作品だった。

 それでやっと観ることが出来たのだが…

 …作品の感想はともかくとし、ジンネマン監督入魂の作品と言うことだけは分かった。

 微妙さを要されるキャスティングの妙、当時タブー視されていた軍への批判、大胆な水着やラブシーンなど、確かに当時にしてはかなりの冒険を行っており、それが上手く噛み合わさったために大いに受けたのだろう。

 本作は軍を扱ってはいるが、日米開戦の直後までの話なので、殆ど戦闘シーンは登場せず、もっぱら軍の内部の人間模様を描いているのが特徴。軍というのがいかに上官のエゴがはびこり、その中で押しつぶされてしまう人間がいるか。と言うことで、当時は相当の問題作として受け止められていたようだ。

 集団生活を送っていると、時折規格外の人間というのが出てくる。何よりも自分の主張を大切にし、決して集団にとけ込もうとしないような、そんな人間がいる。人を使う立場に立ってみると、これほど腹の立つ存在もない。何でこんな簡単なことを拒否する。ほんのちょっと協力してくれても良いじゃないか。と苛つき続ける日々を送ってるわけで…むしろ私はクリフト演じるプルーイットの生意気さの方が腹立ったような…

 それに既に時は経ち、映画の規制も緩やかになり、同じ主題を扱った映画は結構たくさん作られてきたので、今の目で見る限りは本作の主題は可愛いものだ。悲惨な作品は以降続々と作られている。その辺がちょっと乗り切れなかった部分か?

 それに当時はこの部分が絶賛されたはずの、ランカスターとカーの(不倫の)ラブ・シーンも、私には意味が感じられない。ラブロマンスが長引く分、主題がどんどんずれていって、散漫になったし、ランカスターとクリフトとの関わりも薄い。結果的に主題が分かれてしまい、二つの物語が同じ時間軸で進んでいく形となってしまった。少なくとも私にとってはこれは失敗にしか思えない。

 それでもキャラクターに関しては確かに見事。原作者自身がプルーイットをクリフトをイメージして描いたと言うだけあり、はまり役。クリフト自身も並々ならぬ覚悟をもって本作に臨んだようで、撮影前にはかなり前からハワイ入りしており、ホノルルにあるスコフィールド兵舎で実際に長時間の訓練を受け、撮影終了後も数ヶ月役から抜け出せなかったという。

 又、マッジオ役で助演男優賞でオスカーを得たシナトラの作品の入れ込み具合も尋常ではなく、当初シナリオを手に入れて読み、マッジオ役は自分しかないと、内定していたイーライ=ウォラックを押しのけて売り込む。この売り込み方は尋常ではなく、根負けしたコロムビアのハリー=コーン社長により僅か8000ドルのギャラを提示され、それでも嬉々として演じている(これでシナトラとマフィアとのつながりが指摘され、フィクションだが、『ゴッド・ファーザー』でその辺の顛末が描かれている)。

 制服の似合う男ランカスターも存在感があったし、デボラ=カーも表面は物憂げに、内部では燃えさかる炎を持った女性という役所を上手く掴んでいた 。

 総評すると、良い作品であるとは認めるけど、私には合わなかったと言うことで。

(評価:★3)

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