[コメント] カラーパープル(1985/米)
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アリス=ウォーカーのピューリッツァ賞受賞小説の映画化。スピルバーグ監督の初シリアス作品として話題となり、1986年全米興行成績6位。又本作がウーピー=ゴールドバーグのデビュー作だがアカデミー主演女優賞にノミネートという快挙を成し遂げた。
娯楽映画の大家として知られるスピルバーグは、数多くのシリアスドラマも作っているが、その第一作目が本作となる。ただ、スピルバーグの場合、『シンドラーのリスト』(1993)作るまでの数作は(具体的には本作と『太陽の帝国』(1987)の2作だが)けなされ放題。それこそ「娯楽作を作ってやるから俺の作りたいもの作らせろ」と製作者を脅迫しているのではないか?などと陰口まで叩かれる始末。
ただ実際の話、本作は決して悪い作品じゃない。長い女性の半生を通して苦難と自立を立派に描いているし、スピルバーグのアイデンティティとしてアメリカン・ドリームに対するアンチ・テーゼも見られる。何よりキャラ立ちがしっかりしているのが一番。ゴールドバーグは初主演作というのに堂々たるものだ。実際単体の映画としてみる限りは本作はかなりの水準だと言えるだろう。
ただ、一つ問題があるとすれば、本作の演出がもっさりしすぎていたと言う点だろう。こればかりはご愁傷様と言うしかないのだが、そもそもスピルバーグの魅力の最大点は演出力が際だっていたと言うことで、しかもその演出がとても切れ味の良い軽快さが信条だったと言うこと。もし例えばだが、本作がベルトルッチかアッテンボローあたりが作ったのだったら「こんなものだ」と受け入れられただろうけど、それをスピルバーグが作ったという事が「らしくない」とされてしまったのではないだろうか。事実私自身も本作に求めていたのはそれだったから、完全に肩すかしを食ってしまった気分だったし。
原作者のウォーカーはは白人に監督させることを最初は拒否したというが、本作に楽曲を提供しているクインシー=ジョーンズが説得に当たり、その映画化権を買うことが出来たのだという。
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