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[コメント] アマデウス(1984/米)

モーツァルトのような生き方しかできない人間は数多くいるが、その中のほんの一握りの人間だけが、本当の天才と呼ばれる。モーツァルトという存在自体が奇跡そのものなのかもしれない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 私が大の映画好きとなった理由の一つは、高校の時の音楽の先生が、やはり凄い映画好きだった点がある。その音楽の授業は、二月に一回くらいは音楽に関するビデオの鑑賞会だった。2時間の授業だったため、場合によっては部分的にしか観ることは出来なかったとは言え、『サウンド・オブ・ミュージック』、『チキ・チキ・バン・バン』、『タイタニック号の最後』など(後、何故か『白鯨』とか、いくつかのチャップリンものの短編もあった)など、結構色々観させられた。今から思うと、映画の選び方もセンスが良かった。お陰で当時アクション作品一辺倒だった私に、映画って本当に様々な広がりを持っていると言う認識を持たせてくれた(いずれそれらの良質作品には出会えていただろうけど、そのきっかけを作ってくれた事には感謝したい)。

 本作も初見は授業の中で。

 正直な話、私の受けた最初の印象は、「なんじゃこれは?」だった。ハルスの名演である、奇妙奇天烈なモーツァルトの笑い方に、思い切り引いた…なんと不快な笑い方だ。

 正直生理的嫌悪を起こさせるハルスの演技に、とてもこれが名作だとは思えなかったのも事実。実際、サリエリの考え方の方が私にはよほど親近感を覚えた位。

 しかしながら、観ていくうちにそれを感じなくなっていった。否、観るほどに引き込まれていく自分が確かにいた。特に後半、精神的、金銭的にぎりぎりにまで追いつめられたモーツァルトが、それでも身体までぼろぼろになるまで遊びまくりながら描いた、その曲の挿入の仕方は映画的にも見事。『ドン・ジョヴァンニ』を指揮する鬼気迫る迫力も凄い。

 最後のレクイエムの時なんか、手に汗を握って観ていた。クラスで観ていたので、結構ざわついていたようだったけど、それにも気づかなかった(いや、あるいはその時は全員静かになっていたのかも知れない)。

 途中飛ばし飛ばしで約2時間。ざわついた教室の、しかも音楽室のあまり大きくないテレビ画面で観たにも拘わらず、最後は本気で観終え、後でかなり疲れを覚えた。

 サリエリの方に近親感を覚えていた私は、天才の領域というのがやっぱり分からないが、二人の狂気はびんびんに伝わってきた。天才となんとかは紙一重と言うけど、そんな人間へのあこがれも持っていたのかも知れない…あれは生来のものだから、なろうと思ったってなれないし、ああ言う風に生まれてしまったら、ああなるしかないんだろう。

 ちなみに高校時代に購入した唯一のクラシックCDは「レクイエム」だったし(ファルコの「ロック・ミー・アマデウス」の歌詞を暗唱してみたり(笑))、後年、LDを購入した際、一番最初に購入した3枚のLDの一枚は『アマデウス』だったこともあり(ちなみに後の2枚は『紅い眼鏡』と『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』だった。我ながら偏愛の度合いが高いなあ)、これも色々想い出の深い作品。

(評価:★5)

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