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[コメント] 麦秋(1951/日)

ミニエピソードの繰り返しで、ちゃんと物語が進行していることが分かる。これこそ監督の魅力が詰まった作品だとも言える。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 1951邦画興行成績6位。笠智衆が父親役で原節子が娘役を演じる監督の黄金パターンの作品の一本で、『晩春』、本作、『東京物語』のいわゆる紀子三部作の一本である。

 本作を観たのは小津作品を観始めたあたりで、紀子三部作で言えば、『東京物語』と本作がほぼ同時。『晩春』が最後になるので、全く順番が逆だった。それだけにまだ小津映画に慣れてなかったこともあって、当時は退屈なだけの物語だと思っていた。実際この作品はストーリー性が薄く、ミニエピソードの重なりで構成され、その中で父と娘の対話がぽつりぽつりとなされている。言うなれば、小津映画を語る場合、本作こそが最もフォーマットな小津作品とさえ言える。それに、何気なく見える会話が重なっていくことで、確かな心の動きが読み取れた気がするし、時間もちゃんと流れていることが実感出来る。

 それに何より三部作の中でも本作は原節子を一番上手に撮れた作品だと思う。笠智衆とのコンビも本作で行き着いた感がある。

 いろんな意味で小津的要素が最も出た話と言えるだろう。

(評価:★4)

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