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[コメント] コーチ・カーター(2005/米=独)

文武両道というのは、日本では当たり前のように思えるのですが、アメリカではそうでもないんですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ハリウッド産のスポーツもの、特に集団スポーツものは大体パターンが出来ている。それは大体二系統に分かれるだろう。一つは才能はあるが性格に難があるプレイヤーが中心となり、彼が仲間や恋人との交流を通じて、自分の思い上がりを正し、プレイヤーの一員として成長を遂げる物語。もう一つは主人公がコーチで、様々なプレイヤー達の困難に巻き込まれつつも、適材適所を見つけ出して立派なチームにするというもの(スポーツに限った訳でなく、ちょっと探せばこのパターンの作品は数多く見つけ出せる)。

 …ただ、こんな文句を言っておいてなんだけど、こんな物語が嫌いか?と聞かれると全く逆。たとえ型どおりであっても、私はこの手の作品が大好き。努力・根性・友情。こんなものが渾然一体となった物語は燃える。

 その意味では本作は私が期待していたとおり。実話を元にしたとはいえ、ストーリー展開そのものは実にありがちな物語で、見事なほどに定型に沿って物語が進む大変ベタなものに仕上げられている。

 だからストーリー展開に関してはほとんど言うべき事がないのだが、本作の場合はそこに“現実問題”を密接に絡めていることが興味深い。

 日本でもスポーツは目立つし金が儲かると言うと言う事でトップを目指すような事があるが、貧富の差が激しいアメリカではそれが更に顕著。学業で名をなす事が出来ないのならば、体で。と考える事が多いだろう。しかし、スポーツマンの層の厚さは日本の比ではない。どれだけ才能があろうと努力をしようと、栄光を掴めるのはほんの一握りしかいない。その栄光の影には数多くの挫折者がひしめいているのが現状とも言えよう。

 ここでカーターが生徒達に提唱した事は厳しい。しかし例え高校時代にヒーローであったとしても、プロになれる人はほとんどいないと言う事が前提となっている。20代で自分の将来に見切りを付け、過去にしがみついて生きるだけの生き方ではなく、もし夢破れたとしても、前向きに生きる事が出来るための力を与えようとしている事が本作のユニークさであり、単にスポーツに止まらない、生き方というものも示している。

 貧しい家庭の子供が大学進学することの難しさ。貧困地区での、教育の深刻さと言ったアメリカの教育問題の一面も考えさせられる。

 日本の場合、文武両道という言葉があるように、どれほどスポーツに秀でていても、同じように勉強も大切にする風土があるので、割とこの考えは当たり前。と思ってしまうのだが、それはひょっとして持てる者の余裕なのかも知れない。改めて日本とアメリカという国の違いを感じさせられ、新鮮な思いにさせられる。

(評価:★4)

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