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[コメント] 吸血鬼(1967/米)

シャロン・テイトの事がなければ、素晴らしいコメディ作家が生まれていたのかも知れない。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ポランスキー監督は世界的な名監督であり、数々の傑作を仕上げているが、そのジャンルは本当に多彩。文芸あり、歴史あり、前衛あり、サスペンスあり、ホラーあり、コメディあり…ジャンルだけ見るならまるで職業監督のようだが、それぞれがちゃんと自分流に味付けされていて、本当に見事な監督だ。

 ただ、ジャンルによっては受け入れられるものも受け入れられないものもあって、最初の内私はどうにも好みでないものばかり観ていたため、この監督を過小評価していたが、数観る内にどんどん評価を変えていった。そして監督の評価を決定的に変えたのが本作だった。

 この作品はホラーには違いないのだが(実際恐怖演出もかなりのレベルにある)、全編に渡って笑いに包まれたホラー・コメディに仕上げられてる。かなりニッチなジャンルではあるが、私はこれが滅法好きで、コロッと転んでしまった。

 吸血鬼映画にはいくつものお約束演出があるが、その約束を一つ一つ丁寧になぞりつつ、時にそれを逆転させてパロディにして上手いこと笑いに転換させていた。オーバーアクションだけでなく、編集の見事さにも驚かされる。

 とにかく演出が見事なのだが、この面白さというのは、場違いな場所に突然放り込まれてしまった真面目すぎる人間を笑うというものに近い。このパターンは監督には共通するもので、それを演出の匙加減でサスペンスにしたりホラーにしたり、あるいは本作のようにコメディにもしてしまう。かなりきまりの悪い笑いだが、それが巧さなんだな。

 ポランスキーはこの作品で女優シャロン・テイトと出会い、1968年に結婚。だがシャロンは1969年にチャールズ・マンソン・ファミリーに襲われて殺されてしまう。

(評価:★4)

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