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[コメント] アイ,ロボット(2004/米)

プロヤス監督作品は出来が良いので、ひと言「パクリ」とは断じにくいですな。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 正直この作品は予告観る限りでは失敗だと思ってた。特に推理ものの短編を膨らませるには限界があり、アクションでお茶を濁して終わりだろうし、予告編を観る限り、ロボットが妙に気持ち悪く、魅力に欠ける。その予告で『イノセンス』(2004)らしき映像があって、監督を見たら、なんとプロヤス監督。かつて『ダークシティ』(1998)で完全に『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)にインスパイアされた作品を作った人だけに、見事すぎて笑ってしまう。他の監督だったらいざ知らず、この監督だったら間違いない。

 まあ、その程度で終わりだろう。と言う認識で、当然劇場はスルー。テレビ放映を待って拝見。

 ところが案に反し、かなり面白い物語に仕上がっていていた。

 前述した通り、本作は推理部分よりもアクション部分に主体を置いた作品で、アクション部分は質的には高いものの、無表情なロボットの顔以外には今ひとつ特徴無し。

 ただ一方、その分物語は実に良く作りこまれていた。何よりもキャラクタ描写が上手い。

 何よりスプナーの心理描写が良い。

 彼はロボットを毛嫌いしているが、その理由は複雑。彼はかつて事故を起こした際、ロボットによって助けられたのだが、その助けられたと言う事実が実は彼を苦しめている。それはロボットは生き残る可能性を見定めたら、迷わず可能性の高い方を助ける。だが娘が死んでしまったデルは、何故自分より娘を助けなかったのか。そのことを責める。彼の目には、あらゆるロボットは同じ存在にしか見えなかった。

 だが彼自身が本当にトラウマにしていたのは、ロボットに対する憎しみなどではない。彼が本当に後悔していたのは自分が何も出来なかった。と言う事実だったから。

 だから本作はデルが現実を受け入れていく心の成長が描かれていく。彼がサニーを受け入れたと言うことは、自分自身をも受け入れたと言うことに他ならず。デルの左手はロボットだが、それについても当初はまるで左手を憎んでいるかのような描写があったのに、その左手をだんだん頼みにするようにもなってる。

 一見派手に見えるが、実際はその辺がとても丁寧に描かれているので好感度高い。単なるアクションにはしないという監督の意志が見られるようだ。

 設定面ではロボット三原則があまりにも簡単に破られているのがちょっとネックではあり。もうちょっとこの縛りははっきりして欲しかった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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