たぶん、その観念が構造を取らず感覚に流れてしまうところで、映像も音楽も上滑りしてしまっているように感じる。

たとえば、それまでにも散々人生に裏切られ続けてもたくましく生き延びて来た松子が、何故、終盤で突然「敗北」を受け入れて引きこもりニートになってしまったのか？　映画を見ていてもさっぱり理由が判らず、ただ「話の都合上」そうなったようにしか見えない。

トラウマに始まり、汚されて追いやられるばかりの松子の人生で魂の救済を語るのであれば、決して失われない清らかさが貫かれていないと、物語としての説得力が無い。

この映画の、ただ場面場面での感覚的な刺激の連続の果てに「お花畑」で一件落着、という設計では、ドラマとしての感動は無い。

力作だが駄作、だろう。