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[コメント] 野のユリ(1963/米)

シドニー・ポワチエの1作、1作がアメリカ社会を変えていった。皮肉にも彼はアメリカを代表していたのだ。時代に挑戦していたのだ。
sawa:38

命懸けでベルリンの壁を超えてきた尼僧たちに、英語を教える黒人。メキシコ人たちを指導する黒人。皮肉にも彼はアメリカを代表していた。

通りすがりの風来坊が尼僧たちの為に、いやきっと自分の為に教会の建設に奮闘し、冷ややかだった町の住人たちもやがて協力して教会を完成させる。そして・・・

まさに映画向きのストーリーである。ラストも素敵な締めくくりだ。なにしろ悪人が出てこないのが心地よい。

しかし、この何でもないストーリーの登場人物の設定があまりにも「時代に挑戦的」だった。尼僧たちはベルリンの壁を超えてきた英語も喋れない東欧系、教会建設に惜しみなく協力するのは貧しいメキシコ人、そして風来坊は黒人だった。

互いに言葉は通じなくとも「神の御名」の下では共通の価値観を見出せるとの啓蒙映画でもあるが、このあまりにも挑戦的な設定はマイノリティーのアメリカでの生存権を訴えているとみてよいのではないか?

マイノリティーは白人と数の上で拮抗し、やがては凌駕して差別が無くなるのかも知れない。ただし、この多民族の国家は愛国心と宗教という供に実体が無いあやふやなモノでかろうじて統合されているに過ぎない。我々日本人には真の理解は出来ないのだが、もしも共通の宗教というタガがはずれたら・・・

アメリカが宗教を大事にする理由がよく判る。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)jollyjoker 甘崎庵[*] にくじゃが[*] ゆーこ and One thing べーたん

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