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[コメント] いれずみ突撃隊(1964/日)

「従軍慰安婦問題」と「靖国問題」
sawa:38

現在の感覚では「従軍慰安婦問題」は非難こそされ、肯定する者などいない。いや、肯定しようものならアジア諸国はもちろんアメリカ議会からも痛烈な非難を浴びてしまう。今や日本外交のアキレス腱となっている。

本作をはじめ一連の岡本喜八の作品などで「明るく」描かれる慰安所と兵隊さんたちの関係は、あと何年かすると「不適切な表現」として映倫の指導が入るかもしれない。

だが気をつけなければならないのは、これらの作品は慰安婦を政治的に肯定しようという意図を持って作られた作品ではない点だ。(そんな高尚な戦略なんて・・)これらは戦時中とその20年後の制作当時の「あたりまえの空気」をあたりまえのように描いているに過ぎない。

僅かな外出日に慰安所へ女を買いに行く兵隊が我先にと嬉々として走っていく。そんな兵隊たちに避妊具を配給する軍隊。そして女たちは手を振って兵隊たちを迎い入れる。

本作で死に逝く慰安婦に兵隊が言う台詞がある。「兵隊は死んだら靖国へ行けるけど私たちには行く所がない」という慰安婦の言葉を受け兵隊は言う。「お前たちがいたからこそ戦えた。お前たちは立派に戦った。大手を振って靖国神社へ行けるぞっ!」

「従軍慰安婦問題」と「靖国問題」をたった一言の台詞で軽くいなす本作。そんな大それた意識などなく当時の空気を当たり前に描いただけかもしれないが、現在のマスコミで討論されている難しい問題をさらりと解答してしまう力を持った台詞だ。

たった40年の間に変節する「空気」、そして「認識」。これが恐ろしい。

「不適切表現」として削除されてしまう前に再度考える必要があるんじゃないか?

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)太陽と戦慄 ぱーこ

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