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[コメント] 日本侠客伝 斬り込み(1967/日)

特筆すべき異色作である。このシリーズを本作から観る事はお勧めできない。これはこれまでこのシリーズで無常感を積み重ねてきた観客だけが味わえるご褒美なのだから。
sawa:38

**ネタバレ注意**
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このシリーズは、否、東映任侠ものは主人公が追い込まれる不条理さとそれに対する溜めに溜めた我慢の発露が描かれる。観客はラストで主人公が行う大殺戮を容認し、鬱憤ばらしをする。

主人公の行動は暴力であり、一般社会では到底容認できない行為であるが故、そのバランス感覚からかラストの主人公は必ず手錠をかけられ、自己の叶いそうだった小さな個人的幸福を代償にさせられる。

だが本作は異例の展開となる。長門裕之金子信雄等が駆けつけ一緒に立ち回り、さらに兄弟の契りを結んだ大木実が子分を引き連れての登場である。孤高の人高倉健は孤独ではなかった。しかも最後に自首をせず、皆に進められて逃がされ、何と言うことかラストは高倉健藤純子の笑顔の至高のツーショットで終わった。

異例である。だが何と素敵な笑顔の至高のツーショットだったろう。観客はいつも、結ばれることのなかった二人に歯軋りをし、無常感に心震わせてきたのだ。これはマキノ雅弘監督と脚本の笠原和夫が本シリーズの観客に向けた一種のご褒美・プレゼントだったのかも知れない。そうとしか思えない。

言葉を変えれば、本シリーズを本作から観る事はお勧めできない。これまでの悲劇のラストの無常感を積み重ねてきた者だけが味わえるご褒美なのだから。

PS,拓ぼんが初登場・・いい死に方してます。彼の登場シーンでは申し訳ないが健さんよりも彼に目がいってしまいます。

金子信雄が素晴らしい口上を魅せます。上手いです。ほんまもんの芸人ですね。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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