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[コメント] ALWAYS 続・三丁目の夕日(2007/日)

「未完の大ヒット作の続編」という窮屈なポジションで着地点が決められていた。そんな中で精一杯のオリジナリティを見た。
sawa:38

本作の最大の弱点(欠点ではない)は前作で未完に終わっていた問題に予定調和の結末を描かなければならなかった事。もちろんそれは本作の最大の目的でもあるのだから良いのだ。ただ問題は、その為に費やした時間構成だ。その為の時間は前作のシチュエーションの焼き直し・繰り返しが目立った。ここに多くの時間を消費したが故、新たな「新作らしさ」を出す余裕が減ってしまったのではないか。

しかし、その限られた制約の中において本作は精一杯のオリジナリティを挿入してきた。コメンテーター諸氏の評判はよろしくない少女美加の登場、鈴木父の戦争体験、鈴木母の悲恋、給食費未払い、六子の幼馴染の登場・・・

こうしてみると結構な数のサブエピソードがありました。茶川とヒロミ・淳之介が「3人で一緒に暮らそう」というメインの柱によくもまぁこれだけ絡ませてきたと思います。繰り返しますが、残念なのはメインエピソードが前作の焼き直しだった事。

そして評判のよくないサブエピソード群ですが、ここに共通するのが「心の痛み」「心のキズ」です。

現代からみれば「あの頃は良かった」と郷愁の想いで綺麗な面ばかりが思い返される「時代」。でもみんなそんな綺麗なことばかりじゃなかったよ・・・って事はみんな承知しています。そう、今もあの頃も個々の生活では「痛み」と「キズ」ばかりだったじゃないかと。

本作で描かれた「痛み」と「キズ」はそう簡単に解決できるものばかりじゃなかった。でもそんな「痛み」と「キズ」を引き摺りながらも明日は来ちゃうんだよね。綺麗な夕陽を眺めて「痛み」と「キズ」を和らげて明日を迎える準備をするんだよね。

鈴木父が戦争で多くの戦友を失い、亡き戦友と語らうエピソードは私的には絶対に必要だったと思います。私の父も戦後25年ぐらい経ってからやっと戦友会に出席しました。あの時の父は本当に嬉しそうでした。想像ですが、亡くなった者と生き残った者を確認し、これから生きていく者を再確認した戦友会だったんじゃないかと思いました。あの日、父にとっての「戦争」がひと区切りついたんじゃないのかと・・・昭和の男たちは多かれ少なかれ、そういった区切りをつける「儀式」が必要だったんじゃないかと。

思えば東京の大地も戦争で「キズ」を受けた。酷い火傷と大きなひっかき傷で東京は傷んだ。そしてその復活のシンボルが本作で完成した東京タワー。本作はその復活のシンボルからの遠景に復興する東京の姿が重なるシーンで終わる。個々の生活におけるキズや痛みを乗り越えて、明日に向けて復活する為のシンボル、それが彼等の東京タワーだったんだ。

窮屈な続編というポジションの中で、多くのキズと痛みを描き、それを乗り越えようともがき苦しむ庶民を良く描いたと思います。そしてそれを東京タワーとシンクロさせた構図は秀逸だったと思います。

(評価:★4)

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