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[コメント] 69 sixty nine(2004/日)

お馬鹿演出にちょっと引いてしまうが、それを補って余りある完成度。撮影・編集・音楽の巧妙なコラボは邦画史の中でも教科書足りえる。これほどの「映像力」、そう滅多にお目にはかかれない。
sawa:38

先ずはオープニングタイトル、ここでヤラレた。否、正確にはその前の「フェンスの向こうのアメリカ」ばりのシーンで掴まれた。

スローモーション・ストップモーションの連続技。この卑怯ともいえる禁断の技は、その後も多用される。それは監督がもっとも力の入るシーンだから当然なのだろうが、そのすべてのシーンが鑑賞後も鮮やかに蘇る。まったくもって正しい使い方をしている。

タイトルのPOPな感覚は時代性を表しながらも現代でも新鮮な秀作。(何もエンタープライズや安田講堂にノスタルジーを感じているからではない。)

当時小学生だった私にとって、ゲバ棒振るった学生達の世代は「愚の世代」だったと後に認識するようになった。流行感覚で「革命ごっこ」に参加して、赤軍派の壊滅後に「髪を切って体制の象徴たる企業に就職した世代」だと認識している。

ただし、あれだけ「何かの為」に没頭できた事に対して、私の心の中ではいびつな「憧れ」と「嫉妬」が捨てきれない対象でもある。

本作の高校生達もソレに乗り遅れた世代である。しかし時代の空気は彼等にプチ革命を起させる。若さ故にイタズラとも本気ともつかないプチ革命は、それでも私たちからすれば「羨ましい」。

現代の街のストリートで肩で風切るあぶない連中も、今という時代の文化を創っているが、それは「世間の常識への反抗」でしかない。アノ頃の連中の「社会への対抗」とは根本から違っている。

そんな時代の匂いを一生懸命に映像化してくれた。それも「今風」にPOPな映像として・・・アノ時代を現役で生きた世代からすれば「匂いが違う」という指摘もあるのだろうが、私にはわからない。しかし、彼等が嗅いだ匂いといつの時代の若者が嗅ぐ匂いは常に共通なんだというメッセージは充分伝わった。

いつの時代も最大の関心事は女の子に萌える事なのだと。これには安心した。だからこそ、革命だとか戦争だとかという現代とは違う背景に心がときめかされるのだ。

それにしても出演した役者たちの生きのいいこと。そしてスピード感ある構成は宮藤官九郎の技はいつもの事。だけどやっぱり今回の最大の収穫は、みずみずしい撮影とそれを巧みに繋ぎ合わせた絶妙な編集、そしてそれに被さる音楽のタイミングが素晴らしいのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)動物園のクマ[*] トシ[*] ina

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