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[コメント] 座頭市血笑旅(1964/日)

連なって歩く盲人たちの群に座頭市は何を思うのか?やるせない、余りにもやるせない座頭市が描かれる。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「めくらでございまーす」と声を上げながら列をなして盲人たちが連なる。

最初の出会いは、刺客からの目を眩まして助けてもらった。同じ盲人としての暖かな仲間意識があった。

二度目の出会いは旅籠だった。擬似家族を演じていた市を祝福してもらった。盲人でありながら女房と子供がいる。多少の優越感の混じった市の幸せの絶頂だったろう。

本作は異色の作品である。本作での市の「敵」はどうでもよかったという感がある。本作は市の「夢」を描いていたのだから。誰からも愛されず、また愛すこともない孤独の市。そんな市が見たうたかたの幻、それが赤ん坊と女房という擬似家族だったのか。大袈裟な程に市の子煩悩な姿を描き、市の夢見る平穏な暮らしが延々と撮られる。

だが、その日々の合間はまさに鮮血で彩られた修羅の日々でもあった。赤ん坊のオシメを取り替えながらの殺陣は鬼気迫るものがある。両脚の間に赤ん坊を挟み、僅かな「生」を守る市。だが、その瞬間も男達がその脇で血しぶきを上げて死んでいく見事な構図。赤ん坊のオシメもまた真っ赤な布切れであった。

文字通り「生と死」が混在する市の日常にあって、シリーズ上ここまで「生」を意識した作品はなかった。それは赤ん坊の「生」のみでなく、クライマックスの大殺陣シーンでも垣間見えた。火攻めにされ、着物に火がつきもんどりうって転がる市、怯え逃げ惑う市、こんな座頭市は本作が初めてだった。

死をも恐れなかった無敵の座頭市が「うたかたの夢」を見ようとするや「生」を意識せずにはいられなかったのだ。だが、世間はソレを許さない。兇状持ちの座頭市はいやが応にも鮮血の日々を送らねばならないという宿命がある、堅気には戻れない。

そしてラスト、三度目の出会い、そして最後の出会いは・・・ラストで市は彼等から身を隠し、彼等が気づかずに通り過ぎるのを待った。そして連なって歩く彼等とは反対の方向へ独りで歩き始めた。堅気にはなれない市は、独りで、反対の道を歩かねばならないのだ。通り過ぎる盲人たちをやり過ごす市は何を思うのか?通り過ぎる盲人の列は「堅気=市の夢」反対側の地平線はこれから市が出会うであろう修羅の地。空を大きく大地を薄く切り取ったラストの画、去り行く市のシルエットがだんだんと小さく消えていく。美しく、何ともやるせないカットであった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)赤い戦車[*] 水那岐[*]

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