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[コメント] モディリアーニ 真実の愛(2004/米=独=仏=伊=ルーマニア=英)

芸術への苦悩、ジャンヌへの愛情、ピカソへのライバル意識、友への気遣い、全てがモディリアーニの心を通して丁寧に描かれている。また、アンディ・ガルシアも最高の演技。モンパルナスのカフェ「ラ・ロトンド」のいとおしいことよ
スパルタのキツネ

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モディリアーニ(アンディ・ガルシア)がラ・ロトンドのカフェに花束を持って壇上に上ったオープニングは最高でした。画家と詩人が同居するラ・ロトンドは素晴らしいですね。この時点で私はもうイチコロでした。

芸術家を描いた作品には、私がアートに疎いせいか、いつもいつもドップリと浸かってしまう。フェルメールを描いた『真珠の耳飾の少女』はとにかく絵画的な映像に息を飲んだが、本作はそれとは全く違った良さがある。本作のほうが血が通った人間を感じられるし、時代と芸術をその人間を通して描いており感情移入がしやすい。

モディリアーニ演じたアンディ・ガルシアは、芸術への苦悩、ジャンヌへの愛情、ピカソへのライバル意識、友への気遣い、全てに力を感じられる。死と隣り合った危うさがありながら、生命を感じさせる素晴らしい演技をしていたと思う。『ゴッド・ファーザー PARTIII』も良かったが、本作が彼の代表作となっていくのではないでしょうか?

ジャンヌ・エビュテルヌ演じたエルザ・ジルベルスタインも危険なまでに幸薄い美しさをよく表現していた。アンディ・ガルシアとの組み合わは見事でした。

個人的に最も興味を引いたのは、ラ・ロトンドのピカソのテーブルにいつも座る面々。マックス・ジャコブ、ジャン・コクトー、ガートルード・スタイン、と「もう一人」。いずれも本業は画家ではなく、詩人・作家である。本作ではこのメンバーはピカソ寄りに描かれていたが、モディリアーニとの親交も厚かったことで知られている。

特に気になるのは「もう一人」の存在。面長で一際年若く見える彼。マックスとジャンの間に座り、劇中では一言も発しなかった青年。プログラムやimdbにもクレジットされていないので、もしかしたら違うかもしれないが、モディリアーニが亡くなった翌年、マックス、ジャンにその才能を愛されながら20才という若さで亡くなったレイモン・ラディゲと思える。

ラディゲは三島由紀夫が若き日に傾倒していたことでも有名で、ジャン・コクトーとラディゲの友情を描いた三島の「ラディゲの死」は、本作とちょうど同じ年代を舞台としている(ラディゲはモディリアーニの翌年他界)。この作中にラディゲを失いアヘン中毒となったジャンをマックスやストラヴィンスキーらが心配する一幕があるが、そんな触れ合いが本作のモディリアーニやラ・ロトントの描写に重なりとっても良かった。 

(評価:★5)

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