今はもう閉山になって久しい、炭鉱町でワタシは生まれ育ちました。ワタシの幼い頃の記憶には、閉山間際、町の人々のどことなくうなだれたように歩く姿が、今でもこびりついています。いまでも時折目的地への通過点としてそんな風に閉山の憂き目にあった町を通り過ぎたりもしますが、そんな町はたいてい幹線道路沿いに細長く、くねくねと谷あいに沿って集落があります。北海道にはそんなところが数多くあります。そんなネガティブな記憶からかワタシはそこにただよう、何とも言えないうら寂しい空気がとても嫌いです。さびたホーロー看板、窓に板の打ち付けられた民家、廃墟となった大きな炭鉱病院.....。一刻も早くそこを立ち去りたくなるのです。

　この映画にも確かにそんな空気が流れています。正直音楽のことはよく分かりません。ですが、ある観客にとっては映画の登場人物と同じにその空気を呼吸してしまうことがあるのです。それをスクリーンに描き出すことができた制作者を評価したいと思います。 　はなはだ映画評にそぐわない文章ですいません。