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[コメント] 夏時間(2019/韓国)

空気感こそが命。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、祖父の家に行く軽自動車を前から長回しでうつしていく。なんの変哲もない画面だ。しかしこの時間が曲者、こんな画面はあまり見たことがない。何かあるのかとつい画面内を探してしまう。この時間の切り取り方こそがこの映画の眼目だ。この時間の切り取り方が画面にうつるものの空気感をしっかりと定着している。

以降、同じように、祖父の家、夏の夕日、庭の植物、とどこにでもある景色がめったにない時間で映し出される。そうして見終わってみると、たしかに人生の一断面がしっかりと脳裏に残る。韓国ドラマで最大の主題である母親の呪縛がこの映画では母親の不在で表される。そのことを一切説明しない潔さも深く印象に残る。

ところで久しぶりにギンレイホールに行ったのだが、映画の始まる30分前、切符売り場に行列ができている。年配の人が多い。みな本を読んで待っている。スマホを乗っている人が一人もいない。私は行列先の一度切符売り場を見に行ったが、スタッフがいない。しかたなく並んで待っていると上映10分ほど前に行列が動き出した。みなパスを見せて入っていくではないか。ギンレイは年会費11,000円。そうか会員が待っていたのか。私が1,000円支払って中に入ると、一つおきの座席は8割方埋まっていた。土用の平日、緊急事態宣言下のオリンピック中継時に映画館が人で埋まっている。こんな地味な映画に。東京の映画事情はまだまだ捨てたものじゃない、と思った。2021.7.26

(評価:★4)

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