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[コメント] クローズ ZERO II(2009/日)

あのグダグダな前作は今作の為に存在していたんだと思うと、☆増やしてやりたくもなる。増やさないけど。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前作は正直言ってグダグダでした。何やってるのか、何がやりたいのか、もう全然伝わって来ないんです。それは恐らく滝谷源治(小栗旬)という人物そのものがグダグダだったからだと思うんです。鈴蘭でテッペン取るっていうそれだけで動いていた彼ですけど、鈴蘭でテッペンを取るという事はどういう事なのか、それが分かっていなかったからグダグダだったんだと思うんです。芹沢(山田孝之)に僅差で勝利して、テッペンに最も近くなったところで前作は終わりましたが、そこに爽快感なんてものは全くなくて、なんだかボヤけまくった映画だったなーという印象しかありません。

・・・というのは、続編を観て改めて感じた事。前作を観ただけでは全く分からなかったこのボヤけ具合は、続編に大きな影響を及ぼしていました。というか前作がグダグダだったのは、この続編の為の序章に過ぎなかったからなんだとすら思えるくらい。前作が終わった時点では続編は決まっていなかったらしいからまさに単なる偶然なんですけど、私には今作の為に前作が作られたとしか思えない。それぐらい今作は完成度が高かったと思う。

とりあえず今作の冒頭でも源治はやっぱり方向が定まっていない。見えていない。暗闇の中でもがいているような苛立ちが感じられる。それってなんというか不良映画の王道とも言えるんですが、私はやっぱりしっくり来ない。見えない何かにぶつかっていく、その破滅的な匂いが好きじゃないのかな。だから今作も前作と変わりないと思って見てたんです。でも今作は見事にその殻を破る映画だったんですね。

手探り状態で道が見えなかった源治が、鈴蘭の看板を背負うという意味を見事に理解する。その照準が定まった時のかっこよさといったらもう!まさに鈴蘭が一つになったあの瞬間は、私の心もロックオンされましたよ。あのグダグダでまとまりのなかったカラスたちが、大切なものを見定めたあの瞬間。うおー!かっけぇ!かっこよすぎるよ!って鳥肌立ちましたよ。人が守るべきものを見つけた時の強さって言うんでしょうか。あの強さは他に敵うものがないですね。

また鈴蘭の各キャラ一人一人がものすごく立ってたのも前作には見られなかった良い部分。誰が誰なんだか…っていうグダグダ感が、今作ではきっちり描かれていて、一人一人の物語が立派に語られている。鈴蘭それぞれのキャラがそれぞれの自身に対して落とし前をつけている。いいわ。

そして各キャラが立っていたというのは鳳仙の方にも言える事です。こちらはもう立ってるどころかキャラクタリゼーションが抜群に良い。鳳仙という集団のカラーもものすごく良い。幹部以外は坊主なところとか、白い学ランだとか、なんだか無駄に胸が躍る見てくれで、ヒールが主人公を喰うほど魅力的だと、作品そのものが非常に面白くなると私は思っているんですが、今作はまさにソレ。鳳仙は恐ろしくかっこよかった。すでに一つの集団としてまとまっていたからっていうのも大きいのかも知れませんが。その集団を統率する鳴海大我(金子ノブアキ)もめちゃくちゃ良い。私があっくん(金子ノブアキの事です)大好きっていうのを差し引いたって、鳴海大我はめちゃくちゃ良い。単なる強い人っていう短絡的なキャラではなく、どことなく抜けた感じで育ちの良さみたいな品性もあり、ある意味可愛げすら感じられる(ここ重要)、でもなんだか狂気を孕んでいるようなあの不思議キャラ。いい!それに信念を持って喧嘩しているのがいい!かっこいい。相手に敬意を払う姿勢もかっこよすぎる。また漆原凌(綾野剛)なんてのはもう完全体ですね。あの傘とかたまらんです。そしてこの二人が持つ柔らかさと冷たさ。これが実質鳳仙のカラーとなっていたと思うんです。鈴蘭の剛や熱に対する鳳仙の柔や冷。鈴蘭の黒に対し、鳳仙の白。こういった対比も作品を面白くさせた要素だったかも知れません。また先が明確に照らされた鈴蘭に対し、美藤兄の仇という、過去に目がある鳳仙。そしてその対比は勝敗の行方に対する説得力を増す。もう一回言うけど、やっぱり守るものが出来た時の男ってのは強いしかっこいい。単に勝ち負けに拘泥しているのではなく、信念を持って喧嘩しているってのも良かったね。

惜しむらくは数少ない原作キャラらしい美藤竜也(三浦春馬)が活きていなかった事。彼はまさに前作の源治そのもので、たった一人、唯一のグダグダキャラでした。もうちょっと見せ場があっても良かったのでは?と思うし、原作は未読なのでどういう人物なのかは分かりませんが、今後鳳仙のトップに立つような器には見えなかったなぁ。でも今改めて考えてみれば、過去に目をむけた鳳仙軍団の負けは明らかで、兄の仇として抗争に参加しなかった美藤が、今後強さを持つ布石となっていたのかも知れないな。

相変わらず無意味なライブシーンなんかはあるし(原作者とやべきょうすけがこのバンドのファンである事から、クローズ映画化が実現したという話があるらしいけど、そんなの関係ない鑑賞者にとってみれば、それを聞いてもやっぱり自己満足もしくは媚びにしか思えん)、正直なところ今作でのやべきょうすけはいらなかったんじゃ?とすら思える。別に命の重さとかここで言われなくてもいいような事を声高に叫んでいたのも気になる。それよりも芹沢が漆原に対して「喧嘩の仕方ってものがあるんだぞ」って言ったあの言葉の方が重かったと思うし。

あとは個人的なメモ。

・あっくんは煙草吸わないんだから火は点けないであげて!

・私もあっくんにマウント取られたい…(はあと)

・あっくんの白いタンクトップが真っ赤に染まっていく様は『落下の王国』並みの美しさがあった。

・牧瀬のアホみたいな河原のシーンで浅井健一を流すなんて、喧嘩売ってるとしか思えない。

・クラブの階段での源治とルカ(黒木メイサ)のやりとりのシーンで縦書きの字幕が使われていたけど、あれは『狂い咲きサンダーロード』へのオマージュなんですか?

・やっぱり山田孝之、いーよいーよ!

・学園内にある多くの落書きの中に「嵐」の文字、発見!ヘルメットにでかでかと書かれていたよ!

・あっくんのドラムを叩く姿が恋しくなった。早く会いたい(はあと)

とにかく今作の世界観というか、男のかっこよさというか、もう惚れるわ!早々にもう一回観てきます!

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09.04.09記(09.04.07試写会鑑賞)

09.04.19劇場再鑑賞

(評価:★5)

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