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[コメント] ビール・ストリートの恋人たち(2018/米)

映画のなかで確実に進行するのは、あふれんばかりの恋心を瞳いっぱいにたたえた19歳の娘ティッシュ(キキ・レイン)の初々しい“過去”の恋愛物語だ。その思いを断ち切るようにおとずれた理不尽な“現在”は、誰がどう手を尽くそうが止まったまま一向に動かない。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ついに、ときめいていた“過去”は、こんなはずではなかった“現在”を追い抜いてしまう。そして「一家」は“未来”の安寧を願い、互いに手をとり祈り続ける。

事実無根の罪で投獄され刑期を終えた男はファニー(ステファン・ジェイムス)に言う。やっとキング牧師やマルコム・Xの言っていたことが分かったと。150余年前の奴隷解放宣言以来も、数限りなり差別と告発、偏見と抗議を繰り返し、あの60年前の公民権法を経てすら、今もなお、我々ブラックは祈らずにはいられない状況に置かれているのだ。そうバリー・ジェンキンズは、ティッシュとファニーの成就しない、本来はどこにでもあるはずの恋愛物語に託して静かに抗議しているのだ。

ファニーの母親(アーンジャニュー・エリス)は狂信的な倫理主義者として描かれる。彼女もまた身に降りかかる差別と偏見に耐えるため、必至に神にすがったために過剰な鎧(『ムーンライト』の成人したシャロン(トレヴァンテ・ローズ)もそうだった)をまとってしまったのかもしれない。そんなことを考えた。

(評価:★4)

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