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[コメント] 魂萌え!(2006/日)

敏子(風吹ジュン)が獲得する輝きは、決して精神の癒しや外的美しさの変化に起因するものではない。彼女の顔に増した強さのせいだ。奥歯をぎゅっと噛み締めるように頬に力を込めた顔は、女も男も美しい。阪本順治は「決意」の映画を風吹の顔に託したのだ。
ぽんしゅう

その証拠には、初めて敏子と相対するときに見せた昭子(三田佳子)の輝きは、男を慕う女の「決意」の輝きであり、それは実は男に甘える女の依存心の裏返しでしかなく、結局その呪縛から抜け出すことができなっかた昭子の輝きは見る見るうちに色あせていったではないか。最後に敏子の前で見せた昭子の顔には、輝きどころか執着と嫉妬と居直りから生まれる醜さしか残っていなかった。

硬い「決意」に裏付けられた顔は険しく、ある者には恐ろしく見えることさえある。しかし、そこには揺るぎない意思の強さが放つ輝きが存在するものだ。そして、それは女でも男でも同じなのだ。だから、決意の顔を撮ることに集中しさえすれば、作品は必然的に女性映画という枠を乗り越えて人間としての「決意」の輝きを持を描いた映画になると阪本順治は考えたのだろう。風吹は阪本に、女を超越した「顔」を強いられ続けているように私には見えた。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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