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[コメント] 忘れられた人々(1950/メキシコ)

生き方を見失った少年たちを描いて、倫理を説く空疎に陥らず、しかも人の欲望を否定しない。その正直さこそが物語の力とし迫ってくるのだが、はたしてその「力」が向かう先は見えない。ブニュエルの真摯さゆえの人間の弱さに対する容赦のなさの萌芽をここにもみる。
ぽんしゅう

母性の欠落。父性の堕落。思想なき取り締まり組織と、その反動だろうか、強制を忌避する更生学校。善悪の判断を留保して「再現された事態」の背景に、そんな家庭の疲弊と制度の空回りが透ける。本当の被害者は少年たちに違いないのだが、さて「こじれ」をほどく糸口がどうにも見えない。

実は今年(2023年)、これとまったく同じ状況を描いた日本映画を観た。地域性ゆえか歴史の因果か、貧困のスパイラルから抜け出せない沖縄の若年女性たちを描いた『遠いところ』(工藤将亮監督)という作品だ。70余年を経ても社会の貧困構造という悪性腫瘍は消滅し得ないのだろうか。洋の東西を問わず世の中のどこかに絶えることなく「不幸」は存在し続けるという虚しさ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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