アリの思想、行動、女性関係、感情、すべてにおいて”アリ中心主義”。ハンパな自己中はただのワガママで子供なだけだが、この男は自分の心を決して疑わなかった。その時その時に思ったことを、全身全霊をかけて信じた。こんなに頑固で単純で、まっすぐな生き方は誰にでも出来るものじゃない。アリの精神は黄金だと思う。

ストーリーや映像がクールで、あまり多くを語りかけてこない。マイケル・マン監督の視点にも迷いがない。この人も、けっこう”マン中心主義”と見た。

リング場でのありえないカメラアングルがすごい。大胆な接写、乱れ飛ぶパンチ、肉体に拳が突き刺さる轟音、フィルム自体が汗をかいているかのような芸術的な色調。動く絵画を見ているようで、感動した。