コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 真夜中のサバナ(1997/米)

法廷ミステリであることなどいっそ忘れちまえば良い。最期の最期まで奇人怪人紳士録、群像悲喜劇として見れば想像以上に愉しめる。特に本人役で出てるドラッグクィーンレディ・シャブリは最高。下手な名優のオカマ演技の印象など1/100に薄められてしまう程の存在感。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







約5年ぶりに劇場で再鑑賞して3→5点へ。

或るPOV制作時に、原作の性格について知ったので、それに従って見方を変えたら、思いのほか愉しめた。

レディ・シャブリ、ミネルバ婆さん、幽霊の犬を散歩する男、虻男、元弁護士で女好きのジョーなど魅力的なキャラクタが、本当に魅力的に撮られている。主役のケルソー、ジョン・キューザックもとても良い慌てふためきぶりだ。

この映画で一番退屈なのは皮肉なことに、ストーリ上最も重要なはずの法廷のシーンだ。弁護士が陪審員に向かって正当防衛の”正当性”を説くシーン。本当につまらない。退屈だった。だからレディ・シャブリが法廷での証言を承知してくれたのには観ている俺もホっとしたくらいだ。

他のシーンは全て良い。

とりわけ、ゑぎさんが既に指摘しておられる映画の冒頭、ミネルバ婆と飛行機が交錯、その飛行機かと思いきや実は自家用車でやって来たジョン・ケルソー登場。このシーンのワクワク感は並大抵なものではない。

それに対応するかのようなラストもまた素晴らしい。ケルソー&彼女、レディ・シャブリ&弁護士のマスコット犬、老執事&彼の主人の幽霊の犬、幸福一杯の三すくみに、不気味なほくそえむ、再びベンチのミネルバ婆さん。実に映画的なラストシーンだった。

*1・・・「ミネルバ」とはギリシア神話の戦争と正義の女神アテナのローマ名で、このことから、彼女こそがサバナを守護している、あの「天秤を持った処女像」の精霊、”神の名の下に行われる正義”の擬人化された姿、であることは明々白々。

*・・・主題歌をk.d.ラングに歌わせているところからも、クィア=性倒錯者たちに対する差別・偏見を攻撃する作品ということが判るのだが、かといってそれ一辺倒というわけではない。差別も、又、逆差別も是正されるべきである、とイーストウッドは云っているのだ。彼らしい、バランス感覚富んだ好感の持てるメッセージ。

*・・・確かにこれはデヴィッド・リンチっぽい世界だ。TVの連ドラでも面白くなったかもしれない。映画は二時間半に届く長尺だが、それでも足りないくらい。とても残念だ。悪い意味ではなく、もっと彼らにサバナを案内して貰いたかったという意味で。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)緑雨[*] 3819695[*] uyo[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。