[コメント] マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985/スウェーデン)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
最近作った『HACHI 約束の犬』はもちろんですが、ラッセ・ハルストレムの作品には犬がよく出てきますが、よくよく考えたら原点がここにあったんですね。
まず、この映画で臨場感たっぷりに感じたことは、この主人公の少年が二男で、そして本人の意思にかかわらず時として親や大人から奇異な目で見られてしまう環境。それには家族環境のみならず、兄の存在や、家にいない父親の存在などが見え隠れしていますね。
結局、人の性格なんて生まれてそのまま決まるわけではなくて、やはり何かしらの家庭や社会環境の左右されることがよく伝わりました。
やめとけばいいのに余計なことをする。
これが末っ子の宿命です。
映画はそういうレトリックを超えて、映像としても物語としても素晴らしいものでした。
少年イングマルが都会の生活からスピンオフして田舎で生活する。
そこで出会う少年として育てられた少女。
そしてお互いの成長とともに変化する微妙な感情。
そんな行き来する感情の積み重ねに、人々に残る記憶が大人のボクサーとしてのイングマルに乗り移る。
そんな背景が映像だけで伝わる秀作です。
ライカ犬(ロシアの宇宙船に乗せられて餓死した犬)に比べれば自分は恵まれている、という本音とも愚痴ともとれる彼のナレーションに涙しないわけにはゆきませんね。
ラッセ・ハルストレム監督が母国でデビューした作品ですね。
思えばこの監督の作品はみんな優しい。
そして登場人物に悪い人はいない。
『ギルバート・グレイプ』にしてもそうでしたね。
知恵遅れの少年のお話。でもこの映画では兄(ジョニー・デップ)の苦悩が中心に描かれていました。
『サイダーハウス・ルール』はもう少し大人になった青年のお話。
『シッピング・ニュース』にしても『ショコラ』にしても、登場人物が皆優しい。
こんな優しさはアメリカで流行するんでしょうか?
でも彼が祖国で作ったこの作品からすれば、どれも少し強引なこじつけに近い優しさのような気もします。
彼のこのデビュー作は、彼の心底からの優しさが滲み出る見事な作品でしたね。
2010/12/25 自宅
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