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[コメント] バッテリー(2007/日)

敵役(悪役)が全く出てこないことに違和感を感じました。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







泣かせる映画でした。とても素晴らしい作品だと思います。

何しろ原作から丁寧に読んで映画をようやく見ることができたので、思い入れがとてもあるドラマなわけです。

http://blogs.yahoo.co.jp/chokobostallions/22091206.html

実際に映画として見ると、まあそれなりのキャスティングとそれなりの脚色がなされていてとても面白かった。

とくに私がこのドラマで思い入れのあるのが”青波”(鎗田晟裕)ですね。喘息で病気のために田舎へ引っ越すシーンから始まります。そして兄”巧”(林遣都)への強い憧れ。そういう健気さが自分の子供重なるものですから、とても臨場感を味わえました。映画の役柄はイマイチ原作とイメージが異なりましたが、それでもドラマを推進させる意味では、ドラマの核となる存在として価値があったと思います。

そしてもう一人”永倉豪”(山田健太)ですね。この映画のほとんど中心人物です。性格が破たんしている”巧”を見事に支える捕手の役ですね。天才投手”巧”の剛球を受けることのできる唯一の捕手。その存在がこの映画の主役ですね。

バッテリーというタイトルからも、そのことはだれもが分かることなので、この関係がどのように変化するのかが、この映画のポイントとなるわけです。

紆余曲折がありながら、たった1球の剛球を投げるためにバッテリーは友情を強めます。

原作ではもっともっと複雑な関係が描かれているのですが、映画ではこの点がややショートカットされていますね。でも映画としては十分だったかもしれません。

この映画の主役は確かに天才投手”原田巧”なのですが、いずれの人物もが善玉で、本当に壁となるべき悪の存在が見当たりません。

最後に非公式試合を行う対戦校のスラッガーや、相手校のキャプテン(水垣)らも、最後は”巧”を理解できる存在です。

そして”巧”に辛く当る母親(天海祐希)にしても最後に彼を応援しにくる。

くしくも”巧”の祖父(菅原文太)が「体の成長に心がついて行けないのだ」と断言し、そのことを本来は最も理解しなければならない母親に「野球は心を伝えるスポーツなんだ」と諭す父親(岸谷五朗)の存在も、いずれも良い方向に全ての話が進むように構成されている。

実はこの『バッテリー』の原作をスピンオフした形式で「ラストイニング」という本が出されていて、相手校のキャプテン水垣の視点で描く短編があるのですが、この話がとても面白かった。この水垣という人物が実はとても複雑で、最も中学生らしい心の揺れを表現できている存在なのですね。

結局、この映画には悪役が出てきません。敵も味方もない。そんな映画です。これで間違いはないのでしょうが、この良すぎるお話が映画としての決定的な表現を失っているように思いました。

”巧”はもっと苦悩しなければならない。そして”豪”も。その関係がもうひとつ突っ込んで描かれればもっともっと面白かったはずです。原作に忠実すぎて、今一つ面白みを欠いたように思います。

2009/05/03

(評価:★3)

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