[コメント] どですかでん(1970/日)
人間模様と無縁の六ちゃんの列車が走る走る。ああ、黒澤さんがこういう表現を取るとは。
この映画は、表現の結果はともかく、黒沢監督の苦悩がそのまま出てしまった作品ですね。
『トラ・トラ・トラ』事件の後で、自らその失敗を処理しきれずに、それが映像にそのまま表れてしまったということですね。この現実を映像の向こう側に理解しようとすることはとても難しいことだが、この作品以降、黒沢監督は映画を自分のもの、自分だけのためのものとして作るようになります。
それはフェリーニやヴィスコンティの晩年にようなものだが、残念なことにこの作品の失敗の後黒沢監督は自殺未遂事件を起します。
しかしどうだろう?一連の黒沢作品と比較して、まるで異質の映画のように言われているが、実は黒沢映画の原点、それはまるで子供の頃のような原点に立ち返ったような作品と思えないですか?ヒーローも悪役も出てこない黒沢映画。これは、実は、この作品以降の全てがそうであるように、晩年の「死」を経験した黒沢明の表現手法がそのまま映像に出ているという考え。それは映画とかいうことではなく、黒沢自身の原点回帰ではないでしょうか?
実に優しく、地味だがかわいい作品です。
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