僕は天才ではありませんから、天才の気持ちがよく分かりません。今もそれはかわりませんけど、幼年の頃から神童とうたわれた「天才」の代名詞、モーツァルトの在り方を考えさせられました。彼は幼少の頃から父親に音楽の猛勉強をさせられて、神童として花咲きますが、終わりはこの映画同様、皆からの嫉妬をかい、道楽と酒に溺れ、正体不明の男にレクイエムを要求されて徹底的に精神を弱らされ、そして惨めに散ったそうです。自分のお墓も作られることはなかったそうです。その一生はあまりに、はかないではありませんか？一体、天才とは誰のために生きるのでしょう？自分の存在を示す墓標もないモーツァルト、それなのに彼の音楽は時代を超えて今なお愛されている。そんな天才の姿を、サリエリという人間の視点から観る事で、モーツァルトという存在を取り巻く数々の苦悩が絶妙な調和を果たし、まるでこの映画が一つの交響曲であるかのように僕には映りました。本物の彼はどうであったのか分かりませんが、この映画に映されているモーツァルト像はとても印象的で、僕はモーツァルトが好きになりました。