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[コメント] パール・ハーバー(2001/米)

はっきり言おう、私は「アメリカ」が嫌いだ

大前提。

そもそもこういう‘不理解’によって作られた映画は昔からあった。フィリップ・カウフマンの『ライジング・サン』、サミュエル・フラーの『クリムゾン・キモノ』、サム・ペキンパーの『キラー・エリート』などなど、数え上げればきりがない。が、である。

例に挙げた3作はあくまでも「映画」を作ろうとして、結果的にキワモノになってしまっていた。しかし、『パールハーバー』は最初から確信犯的に‘不理解’を装い、わざと映画を「問題作」化しているだけじゃないか(※注1)。要するにただの開き直りである。腐れ日本人が「いや、南京大虐殺はなかったのだ!」とのたまうかのごとく(※注2)。つまり、わたしのように気狂いになったように批判する奴=ピエロがいることをあらかじめ想定した上で、映画を作っているのだ。(こういうのをシニシズムと言う)。

しかし、なぜ?

あ〜、言うのもめんどくさい。話題作りである。パールハーバーはダシに過ぎない(※注3)。ある意味でそれは、映画を作ることがそのまま宣伝することになっているのだ。カン違いしないで欲しいが、わたしは右翼でもないし、ナショナリストでもない。歴史認識が各国で食い違うことはよくあることだと十二分に知っているつもりだし、そういうPC(ポリティカル・コレクトネス:政治的な正しさ)が間違っていても映画がおもしろければそれでいい(と思う時もある)。が、ホントにおもしろいか、これ?

たとえば、この映画がおもしろと思えてしまう人は、同じ監督の『アルマゲドン』がおもしろいと思えるんだろうし、『インディペンデンス・デイ』とかにも無邪気に感動できるんだろう。しかし、「ハリウッド映画って、こんなもんじゃん?」というのは、明らかに違う。あくまでもそれは、80年代以降のハリウッド映画であって、それ以前のハリウッド映画(特に70年代)にはきちんと自己批判があったものが数多くあった。そして、わたしが嫌いな「アメリカ」とはまさに、80年代以降のそれなのだ。いや、90年代のハリウッド映画でさえ、自己批判が戻りつつあったのに。それなのに、『パールハーバー』の、80年代の「アメリカ」に先祖がえりしてしまうことへの批判性のなさと言ったら!80年代のレーガン&ブッシュ路線(レーガノミックス/強いアメリカ/強い父/軍事拡張/「スターウォーズ計画」/弱肉強食)へとブッシュjrが先祖がえりしてしまったようにね!

おもしろいものを正直におもしろいと認めることは確かに大事だ。しかし、ダメなものはダメだと認めることはもっと大事なことじゃないか。最近、ダメであることがカッコいいという(80's的)風潮の復活の兆しもあるが、ダメなものはダメである。カッコいいものはカッコいい。それ以上でもそれ以下でもない。

なんか‘悟りきった大人’として『パールハーバー』に接してる人よりも、無邪気に怒ってる人の方がある意味で健全だと思うだけどな〜〜。ああああ、シニシズムって、ホント嫌だよ〜〜〜〜〜〜〜

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※注1・・・たとえばポール・バーホーベンの『スターシップ・トゥルーパーズ』だったら、徹底的に戯画的、白人至上主義的なふるまいをピエロのごとく振る舞うことで、自己批評性を獲得していたのではないか(いや、そんな‘正しさ’がなくても、あの映画はダントツにおもしろいがぁ!)。

※注2・・・じゃあ、なんで日本はそれを映画にしないのか。ずばり、金と勇気(=厚顔無恥)がないから!ほら、日本て、恥の文化だし。けっ。

※注3・・・日本軍の奇襲攻撃を事前に察知していたにもかかわらずそれを‘ダシ’に使い、アメリカの民衆の戦意高揚のために、わざとパールハーバーを攻撃させたように。しかも、本当に重要な軍事器機だけは避難させておいて!

(評価:★1)

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