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[コメント] ニュースの天才(2003/米=カナダ)

原題『Shattered Glass』のダブルミーニングを生かし切れていない。よくまあグラス本人が映画化を了解したもんだ。[銀座ガスホール (試写会)]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず致命的なのは、主人公がなぜ記事の捏造に走ったかという理由がはっきりしないことだ。最初のうちは、信頼していたボスが解任され、ゴマスリ屋の同僚が抜擢されたから…というのがきっかけではないか(それはそれでかなり下らない理由ではある)と見られるが、実はそうではないらしい。では何故? 名門雑誌の記者であることからくるプレッシャーが駆り立てた…と見ることもできるだろうが、それはあくまで推察でしかない。実話なのだから、もっと主人公の心の闇に迫ってほしかったところだ。

さらに、この話、最初は優秀な雑誌記者であるスティーブン・グラスという人物の物語であった(そして最後までそうあるべきだった)のに、彼の捏造疑惑が発覚してからは、真相を突き止めようとする編集長チャックに重点が移っている。ラストになって、スティーブンを追及することに反対だった同僚記者たちが、「すべての記事をチェックし直さないといけない」というチャックの言葉に全員うなずくに至っては、もう完全に主人公はチャックだろ?としか言いようがない。この中途半端ぶりはどうしたことだ。

そもそもタイトルが『Shattered Glass』(割れたガラス=glass=スティーブン・グラスのことも指している)という以上、彼の「割れっぷり」をとくと見たかったところだ。が、割れているのはグラスではなく、残念ながらこの映画であったようだ。

それにしても、ヘイデン・クリステンセンがまるで子どもみたいに「僕は悪くない」と泣きわめく姿をスクリーンで観て、スティーブン・グラス本人はどう思ったのだろうか? 自分はこんなに情けない人間でした、と世界中に宣伝されているにも等しい状況なのに、彼は我慢できたのだろうか? よっぽど多額のギャラをもらったのか、あるいは「過去のことは過去のこと」と悠然と構えていられる大人物なのか。

そうそう、こうやって映画の評価もネットでチェックしている人にとっては、「http://何とかかんとか.com.html」なんていう“あり得ない”アドレスが出てきた時点で、白けること間違いなしだろうな。

(評価:★2)

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