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[コメント] 世界大戦争(1961/日)

市井の人たちのドラマとポリティカルクライシスな場面の交錯がうまく、戦争というロジックが日々の暮らしというものの中で何の意味も見出せないことがよくわかる。また、描かれる生活のつましさが、強大な力の無慈悲さを一層強く感じさせる。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







玄関を入るとすぐ家族が卓袱台でご飯を食べている、そのすぐ隣の階段をのぼりきった部屋には他人(エリート船員)が下宿しているような、そんな肌と肌が触れそうな狭い空間でつましく暮らしている。こんなちっぽけなものさえ奪っていくのか? という憤怒と悲哀の情がやっぱり沸いてきてしまいます。

物が豊かだってことを単純に悪いとは思わないが、例えば、長い航海に出てしまう笠智衆に「海の上でお正月を迎えてしまうでしょ。だからみんなで今お正月の歌を歌ってあげましょう」といって子供たちが合唱し、それを嬉しそうに聞いているシーン。こういう気の回し方とかって一種の生活の知恵だったんだろうな。ちょっとした工夫で気持ちが豊かになることをこまめにかかさず、なるべく満ち足りて暮らしていようという知恵。昔のほうが今よりも思いやりに欠けることだってたくさんあったと思うけど、少なくとも「思いやりというものは大切だ」ということは、今よりも疑いなく信じられていたと思う。核戦争はなかったけど、ひょっとすると「何かしらの世界」は滅びかけているのかも知れません…。

(評価:★4)

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