寄生獣に乗っ取られた母親が目の前で変形していくという現実を受け入れられず、その元母親の攻撃をまともにくらって倒れるシンイチ（主人公）。原作漫画『寄生獣』全編の中でも屈指の名場面。微温的な日本映画で、この場面が映像化されるだけで凄いと言えば凄い。だがどうして動画なのに漫画よりスリリングに描けないのだろうと思う。

　本作では例えば、登場人物たちは電柱のように突っ立ったまま身体を動かさずに台詞を喋る。表情も変えない。カメラ（フレーム）も固定されているから、コスト要因もあった（安く上げる）かもしれないが、むしろ原作の漫画世界の再現に腐心しているのだ。

　日本の漫画を原作とする日本の映画でこういう作風は少なくない。紙の上で線の動かない漫画が“動き”を表現するため工夫を凝らしてきたことを思えば皮肉な話で、本来、映画は漫画の真似をして動きを制限する必要はない。この不自然な表現体系を、映画とは似て非なるという点を踏まえ、漫画映画、と呼んでいいのではないか。

　漫画映画もそれなりに情感を紡ぎ出し得てはいる。だが、映画は映画の特性を活かしてほしい。

75／100(15/01/13見)