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[コメント] スープ・オペラ(2010/日)

なんの変哲もない日常こそ、緊張感に満ちた画面で描くべき。このスープさえあれば生きていけると、早々に結論しちゃってるし、物語を映像にて語っていくということの意識が低い。
G31

・このスープ(美味しいスープ、というよりは、ベーシックなスープの意味と思われ)さえあれば生きていける、と結論を早々に言っちゃってる。

・なにもない、なんの予定もない、心配事もない、奇跡みたいな1日、という台詞が始めの方であったが、いつもそんな風な日々を過ごしている人物という雰囲気が濃厚だった。実際、見進めるとその通りの人物である。

・エジプトのバス――いつ来るかわからない、待てば来ないし、待たないときは来るが、乗りたければ来たバスに飛び乗るしかない。気の利いた小話ではあるが、週刊誌で読み飛ばす阿川佐和子の連載エッセイだったら印象に残るネタにもなろうが、繰り返しの観賞や時の経過に耐えうることも前提条件となる映画において紹介されても、感心できない。そもそも映画にこそそういうネタ元になってほしい。(「この状況、まるで『スープ・オペラ』だね」「そうそう。俺もそう思った」といった密やかな会話でも成立するような。) 少なくとも語りでサラッと処理しちゃうのは最低。飛び乗るところを実際に見せる映像とか、何かが欲しい。

・移動遊園地の遊具が、さびれたままうち捨てられている空き地、なんて日本中どこ探してもないよ。いや、あったとしても、この映画にそれの<ある>リアリティがない。具体的には、遠景が無い。登場人物は忽然とこの場所の前に現れるのだけど、いつも同じ距離、同じ角度からの近景(フルショット)だけで、周囲の状況がどうなっているのかわからない。多分、スタジオの天井とか梁とかが映り込んでしまうとか、その手の事情があるのだろうが、オープン・セットに見せるなら遠景も含めて作り込んでおくのが当然ではないか。見ている画面から、どうしても<手抜き感>が伝わってくるのだよ。

・なんの変哲もない日常を描く映画こそ、ハラハラドキドキさせる緊張感に満ちた画面になっているべき。だからこそ、さまざまな不穏やリスクに溢れた世界に成立する<平穏な日常>が、尊いものであることに気づけるはずなので。

65/100

(評価:★2)

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